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【池內博之コメント付き特別映像】ルッツという存在がまるで巨大な生き物に見えてくる‼活弁シネマ俱楽部初配給作品『ルッツ 海に生きる』



美しいマルタ島の潮騒を感じる。ルッツという存在がまるで巨大な生き物に見えてくる。
これは愛と希望の映画だ。

池内博之/俳優
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

『ルッツ 海に生きる』
http://luzzu-movie.arc-films.co.jp/

☆イントロダクション
海に囲まれたマルタ島で、主人公はルッツという美しい船に乗っている。
色鮮やかなその木造船は、この地の漁師が先祖代々で受け継ぎ、それぞれの家族が大切に守ってきた伝統の船。彼も曾祖父の代から修理を繰り返して、漁に出てきた。彼にとってルッツで漁をすることが、誇りをもって取り組める唯一無二の仕事であり、生まれ故郷の港町において彼は伝統継承の担い手である。

主人公を悩ませているのは、魚が捕れないという厳しい現実。温暖化の影響もあって、魚の量は減るばかり…。それを打開するために作られたはずのEUの漁業のルール(※1)や、大型トロール船(※2)の存在が個人経営の漁師たちを苦しめている。
小さな港町のコミュニティには、ヒエラルキーが存在し、その秩序は保たれている。そこを仕切るのは仲買人。絶対的な権力をもち、魚市場での競りを仕切る存在。彼らが競りにかける順番や最初の価格を決める。仲買人に逆らえば競りには参加できず、漁師は自ら今日捕った鮮魚を港周辺のレストランに売りに行くしかない。ルッツの漁師は一番重要な存在でありながらも、このヒエラルキーの末端の存在といえる。
ルキーノ・ヴィスコンティ監督・初期の傑作で、イタリア・ネオレアリズモの代表作『揺れる大地』(1948)。この名作では、シチリアの漁村を舞台にその地の実際の漁師たちを配役して、仲買人に反旗を翻した漁師の苦悩と葛藤を見事に描き切っている。アレックス・カミレーリ監督は、『揺れる大地』にオマージュを捧げる意味で、70年以上が経った現代のマルタを舞台に、実際の漁師を主人公に本作を製作した。

お金を稼ぐことは、家族と生きていくために必要である。結婚し初めての子供が生まれた主人公に、その現実が立ちはだかる。ただ、自分の誇れる仕事を持ち、家族と一緒に幸せに暮らしたい。それだけの小さな望みが、彼には果てしない夢のように思えてしまう。その窮地に立ち、彼は何を思い、どんな選択をするのか。
誰もが立つ人生の岐路、その先に何があるのかは誰にもわからない。そして、主人公が何を決断しても、それを責めることは誰にもできない。自分の人生は、自分で選び、進んでいくしかないのだから―。

※1:EUの共通漁業政策(CFP)のこと。国ごとの漁獲量や魚の種類別の禁漁時期など様々な規定がある。
※2:トロール船漁法で漁をする大型船。底引網で海底の生物を根こそぎ捕獲することから、混獲となり漁獲対象ではない種を大量にとってしまうことや、海底を傷つけることが問題になっている。

☆監督
アレックス・カミレーリ
映画監督。1988年1月20日生まれ。マルタ出身のアメリカ人。
サンダンス・ラボとフィルム・インディペンデント・ラボの卒業生であり、『ルッツ 海に生きる』が長編監督デビュー作となる。『ルッツ 海に生きる』はマルタ政府の文化助成金で製作され、2019年のLes Arcs 映画祭Works-In-Progress 部門に選ばれた後、メメントフィルムが世界配給を担当して2021年に公開された。また編集で参加した作品が主要な映画祭で上映されている。「KEEP THE CHANGE」は2017年トライベッカ映画祭最優秀作品賞と最優秀監督賞に、「BLOOD KIN」は2018年ヴェネツィア国際映画祭SCONFINI部門に出品。HBOで放送されたSF「華氏451」(2018)ではアソシエイトエディターを務めている。
現在、同じくマルタを舞台にした第2作目の長編を準備中で、マルタ在住。

☆キャスト

■ジェスマーク:ジェスマーク・シクルーナ Jesmark Scicluna(実際もルッツの漁師)
漁師。代々受け継いだルッツの漁師という仕事に、誇りを持っている。子供が生まれたばかりで、仕事に追われながらも、子育てにも熱心。妻の両親や親せきに不信感をもっている。

■デニス:ミケーラ・ファルジア Michela Farrugia  (俳優)
ジェスマークの妻。港のレストランでウエイトレスをしている。慣れない子育てに励んでいるが、息子の発育不良がわかり戸惑っている。夫が安定した給料をもらえる仕事につくことを望んでいる。

■デイヴィッド:デイヴィッド・シクルーナ David Scicluna(実際も漁師。ジェスマーク・シクルーナの従兄) 
ジェスマークの親友で漁師仲間。ルッツより、少し大きな漁船で漁をしている。ジェスマークを心配して、率先してルッツの修理をしてくれる。

■ボス:スティーブン・ブハジーア Stephen Buhagiar
新しくやってきた仲買人のボス。港の競りや商売を仕切る存在。漁師が彼に逆らうと、この港で魚を売ることができない。闇取引など、手広い商売をしている。

■ウダイ:ウダイ・マクレーン Uday Maclean
外国人漁師。ボスの下で片腕として働き、船を住処にしている。異国で外国人として働く辛さを感じながらも、母国の家族を思う優しい一面がある。