ショスタコーヴィチ 2台のピアノのための組曲 作品6
1. prelude 前奏曲
2. Fantastic Dance 幻想的舞曲 4:22~
4. Finale 終曲 7:33~
【作曲の背景】
ロシアの天才作曲家 ドミトリー・ショスタコーヴィチ 弱冠15歳の時の作品。
1922年2月4日、ショスタコーヴィチの一家を悲劇が襲った。父親が46歳で急死したのである。家族は大変悲しみ、また大黒柱を失い経済的な困窮も深刻であった。
15歳のショスタコーヴィチは健康上の問題を抱えながらも映画館でピアニストの仕事をして家計を助けた。
姉のマリーヤが音楽院を卒業して就職するまでこの苦しい状況は続いた。
この2台のピアノは1922年の3月頃に作曲され、愛する亡き父に捧げられた。
姉と共にいくつかの音楽サークルでこの曲を披露しており、その後1923年6月22日に、ショスタコーヴィチが室内楽愛好会にデビューした際にもこの曲を披露した。
ホールでの初演は1925年3月20日、モスクワ音楽院小ホールにて、ショスタコーヴィチ自身とレフ・オボーリンによって行われた。
(※レフ・オボーリンはショパンコンクールの初代優勝者であり、また著名なピアニスト ウラディーミル・アシュケナージの師でもある)
【曲の解説】
この曲は以下の4曲からなり、ロシア風の甘美な抒情性に満ちており、感傷的で美しい作品となっている。形式が巧みに取り扱われ、また個性的なリズムの感覚にショスタコーヴィチの個性が強く表現されている。
Ⅰ、前奏曲
重厚なテーマと絡み合いながら 聖堂の鐘の音が鳴り響く。ロシア正教会は低音から高音まで大小17個の鐘を持ち、セブンスの響きを持つ。この前奏曲ではその鐘の響きを存分に感じることができる。
※ロシア正教会の鐘については
「funeral bell Russia」「正教会 鐘」等で検索すると内容がより詳しく分かります。
また、You Tube内では「Russian Bells」等で検索すると いくつか実際の鐘を鳴らす動画を視聴することが出来ます。
Ⅱ、幻想的舞曲
前奏曲で紹介された重々しいテーマが、一転大変軽快な速度で演奏される。
しかし軽快でありながらも 短調が醸し出すもの悲しさが終始付きまとう。
過去の無邪気な幼少期を思い出す様でもあり、天使が舞う様でもあり、また途中誘惑するような異国情緒あるメロディも聴こえます。 天使のトランペットが途中 何度も響く。
Ⅲ、夜想曲
テーマが反転した形で現れ、大変穏やかな長調の響きで演奏され、抒情に満ちた美しい夜想曲となっています。
途中、前奏曲の鐘の響きが思い出の様に差し挟まれます。
(今回の動画では演奏しておりません。)
Ⅳ、終曲
葬送の曲。ファンファーレに続き 遠くからとぼとぼと進む葬列が徐々に近付いて来る。
前奏曲から一貫して続く鐘の響きと、テーマ1、テーマ2、反転、断片…、これらが夢のように形を変え繰り返し登場する。
悲しみ、激しさに続き情緒的な美しいメロディを聴くことができる。そして最後は自らを鼓舞するような激しい繰り返しで、自分を解き放つ。ここにショスタコーヴィチ不屈の精神が強く現れている。
【演奏者より】
大切な人を亡くした全ての人に捧げます。
悲しみを分かち合い、鎮魂の祈りを捧げ、そして苦難と逆境を乗り越える人の不屈の精神を願い、演奏致しました。
また、 2台のピアノの為の曲は一人では決して演奏出来ません。
相方を務めてくれた友人に心より感謝を申し上げます。
第1ピアノ Tomoe Kataoka 片岡知絵
第2ピアノ An anonymous pianist 本人の希望により匿名
録音場所 愛知県碧南市エメラルドホール
録音日時 2016/10/21
使用ピアノ 1st. Steinway D274 / 2nd. Boesendorfer Imperial
photos by Tomoe Kataoka
第2ピアノ奏者の希望により音源のみをアップ