「これ(足)がね、もう上がらないんです。力が無いんですね」。
73歳の豊田広美(とよだ・ひろみ)さん。
およそ2年前(2021年4月)に新型コロナウイルスに感染し、
その後“後遺症と思われる症状”に悩まされています。
「元に戻らないんです/なんだろう、この倦怠感というか、だるさ」
感染直後は自宅で療養していましたが、数日して症状が悪化。
意識不明の状態で病院に搬送され、およそ1ヵ月間入院します。
その後、肺に重い障害を抱え、
医師にも「完全な回復は難しい」と診断されました。
Q「酸素が取り入れにくい?」
「苦しいです、長い時間のマスクは。家ならマスクしなくていいので」。
感染前は介護ヘルパーとして働き、生きがいだったと話す豊田さん。
今も復帰できていません。
「(仕事を)やりたいですけど。この体が持続してくれないんです」
新型コロナの流行が始まってから、およそ3年。
“後遺症”の有効な治療法は、今のところ見つかっていません。
忽「「後遺症」の方々の多くは、時間がかかりつつも/だんだんと症状がよくなって
いく方が多いということは間違いない。ただ症状が長期的に、3年経っても
のこっている方もまれにいますし、最終的に良くなるのかはなんとも言えないところ」。
大阪大学医学部の忽那賢志(くつな・さとし)教授によると、
日本では、「後遺症」の解明に向けた研究をすすめたくても、
土台となる「まとまった患者のデータが無い」のが現状だといいます。
忽「実態を知るためにはデータがあった方がいいと思います。感染した
人のうち、どのぐらいの人が後遺症に悩んでいるか、とかですね。実際に、どういう
(症状の)方が多いのか、とか」。
感染者の数は、日々公表されていて
第7波や第8波にかけて波は大きくなっている事がわかります。
また、死者の数も、日々あきらかになっています。
一方、「後遺症患者」の数は、正確な集計ができていません。。
Q(後遺症患者の)追跡は難しい?
忽「(感染後)診断したときの症状は医師が聴取して取ったりとか、届け出の中にも初期には症状を記載したりもあったので /情報収集しやすかったですけど、「どの次点でどのぐらいの(後遺症)症状が残っているのか」っていうのは、データとしては集めにくいですね」。
2年以上にわたり、 “後遺症”に悩んでいる豊田さん。
経済的な不安を抱える中、
退院からおよそ半年後、知人からあるアドバイスを受けます。
退院後も、自宅でおよそ1年にわたり酸素吸入を続けていたことなどがきっかけで
“ある決断”を迫られます。
「(酸素吸入をしていたので)ガスが使えなくなったので、IHに変えてもらって。」
自宅のリフォームです。
キッチンのほか、段差を解消したり、手すりを付けたりするなど、
かかった費用は総額で300万円ほど・・・
一方、退院直後の収入は夫と合わせて月8万円ほどの年金のみ。
老後の貯金を取り崩したといいます。
「コロナ後遺症の休職であれば、労働災害が適用されるのでは」
実は、新型コロナへの感染や、感染が原因の「後遺症」症状について、
「労働災害」として認められるケースがあるのです。
その条件となるのが、
・「感染経路が業務によることが明らかな場合」と
・「経路が不明でも、感染リスクが高い業務に従事し、
それによる感染の確率が強い場合」の2つです
豊田さんは介護ヘルパーとして働く中で感染した可能性が高いとして、
・「発症2週間前の行動履歴」と「同居家族の発症歴」
などを書いて申請したところ、去年8月、労災と認められました。
「労災で(新型コロナ後遺症も対象)というシステムも知らなかったし、
パートでも労災適用されると、全く知らなかった」。
労災が認められると、休業補償として「給料の8割が補償」されるほか、
後遺症を治療するための医療費がすべて、国から補償されることになります。
「こんにちは」
この日は「ひょうご労働安全衛生センター」の矢野さんが、
自宅を訪れました。
矢「以前お会いして以来ですけど、症状いかがですか?」
豊「同じような(咳き込む)すいません(咳き込む)状態でしてますけど、
無理しなかったらこうして普通に自宅での生活はできてます」。
豊田さんの、労災の延長手続きを行います。
矢「コロナ(後遺症)で治療した分の治療費について請求する書類になりますので、
ここにちょっとお名前と」。
新型コロナウイルス感染についての労働災害の請求件数は、
去年末時点でおよそ14万件。(141、639)
労災の相談や、請求のための支援などを行う矢野さんは、
この数について少ないとしていて、
「業務上のコロナ感染が労災の対象になる事自体、
知らない人は多いのでは」と話します。
矢「医療従事者の方や介護の方は、感染リスクが高いのもあり、/労災申請
されている方も多い。事務職の方でも、たとえば事務している横の席の人が
コロナに感染したりとか、同じフロアで作業している方で感染者がいるという事に
なれば、申請していただいた方が良いんじゃないかなとは思います。