円安の影響を受け、ついに1グラム1万円を突破した金相場。買取専門店では、高額買取が続発し、連日喜びの声が上がっていました。

そんななか、金を含むあらゆるものが集められている工場では、金をリサイクル。さらに、いまや私たちの生活に欠かせない“アレ”も作られていました。

■“さみしい思い出”の「五輪硬貨」が…

全国に750店舗以上を展開する買い取り専門店。この日、訪れたのは40代の男性。持ち込んだのは、東京2020オリンピック競技大会記念貨幣です。

金を売りに来た40代男性:「オリンピックだから買ったけど、今となればさみしい思い出なので。値段が上がっているなら」

12万円も出して手に入れたという記念硬貨が…なぜ、さみしい思い出に?

40代男性:「オリンピック、テニスのチケットが当たって。周りに自慢していたのに、無観客になった。今となれば、何だったんだろうと」

実は、男性がゴールドコインを手放すのには、切実な理由もあります。

40代男性:「エアコンと冷蔵庫とテレビ。この夏、一気に家電が壊れた。子どもの夏期講習も35万円。尋常じゃない値段で」

突然降りかかった、およそ120万円の出費。その足しになればと、金を売りに来たといいます。

はたして、買い取り価格は…?

買取大吉 査定員 森祐太郎さん:「きょうでしたら、買い取り金額20万円」

40代男性:「うおー。マジすか!?スゴイな」

12万円で購入した金の硬貨に、20万円の値が付きました。

40代男性:「ちょっと、オリンピックが良い思い出になった」

森さん:「良かったです」

現在、国内の金相場はコロナ禍前と比べおよそ2倍に。1グラム1万円を超え、過去最高値を更新しました。

森さん:「世界的に経済が不況に陥ると、金が高騰すると言われています。コロナや銀行の破綻や戦争ですね。今回、金が(1グラム)1万円を超えたのは、ドル高円安が関係している」

■金アクセサリー20点の価格に「頭クラクラ」

空前の金価格の高騰を受け、買い取り希望者が続々と来店。30代の男性は、祖母の遺品である金のアクセサリー20点を持ち込みました。

森さん:「こちら104万6000円ですね」

30代男性:「えっ、本当ですか!?どうしよう。頭クラクラしてきました。母親、父親との旅行のお小遣いに」

別の30代男性が持ち込んだのは、金のインゴット500グラム。

30代男性:「母のモノで、祖父から受け継いだようです」

母親に頼まれて、売りに来たといいます。すると、衝撃の買い取り価格が…。

森さん:「485万円ですね」

30代男性:「ちょっと、はい。ありがとうございます」

買い取り専門店以上に“金”が集まってくる場所があります。

■都市鉱山…“金”リサイクル最前線

それは、金のリサイクル工場です。この工場には、金を含んでいるあらゆるモノが集まります。

電子機器の基板にも、至る所に金が使われています。電気を通しやすく、さびにくいためです。

さらに“金”は、こんな所にもありまあす。

田中貴金属工業 長岡章夫工場長:「ICチップですね。クレジットカードのICチップ。あそこに金が入っています」

なぜか、布や手袋も…。実は、金を扱う工場で使われていたモノだとか。

では、気になる“金”のリサイクル技術を見てみましょう。

長岡工場長:「こちら危険ですので、メガネを。先ほどあった回収物は、基本的には酸でとかします」

電子基板などは、あらかじめ破砕し余分な部分を取り除いて、金を取り出しておきます。これを「硝酸」と「塩酸」を混ぜ合わせた液体で、およそ2時間かけて溶かすのです。

その後、濾過(ろか)して不純物を取り除き、乾かすと…。

長岡工場長:「(Q.これは全部が金?)はい、金です。色が違うので『本当に金?』って」「(Q.大体いくらぐらい?)5キロなので5000万円。これで、家買えます」

さらにこの砂状の金を、およそ1200℃の熔解炉で溶かし液体状に。これを大量の水で一気に冷却します。すると、みるみるうちに金のつぶが現れました。

長岡工場長:「これが99.99%の金のつぶになります。20キロ、金額でいくと2億円」

埋蔵量が限られているため貴重な“金”。鉱山では、鉱石1トン当たりから5グラムほどしかとれません。

一方、“都市鉱山”と呼ばれる、こうした廃棄製品などからは、1トン当たり、200グラム~300グラムの金がとれるのです。

長岡工場長:「“都市鉱山”の方が、回収効率が非常に良い」

年間3000トンの回収物を受け入れているこの工場では、1年でおよそ14トンの“金”を取り出しています。

そして、様々な製品へと生まれ変わります。

■コロナ禍で需要増…驚きの金製品

およそ1ミリメートル角の部品にも金が…。

田中貴金属工業 電子部品セクション 大牟田正美さん:「スマートフォンなどの電子デバイス関係に多く使用されていて、近年、右肩上がりに数が増えています」

“金”がなければ、私たちの生活は成り立たなくなっているのです。さらに、意外な製品にも…。

田中貴金属工業 榊原雄広さん:「コロナ禍で需要が高まった“金のコロイド溶液”を作っています」

金の粉末に特殊な液体を加えると赤色になります。実はこれ、今や我々の生活に欠かせない“アレ”に使われているのですよ。

榊原さん:「金は赤色に発色する他に、タンパク質を強く吸着する性質があります」

その性質を利用して、新型コロナやインフルエンザの検査キットに使われているのです。

榊原さん:「金の調達や加工する技術に自信を持っていますので。こういった分野で貢献していきたい」

過去最高値を更新した“金”。その価値は、私たちの生活を支える存在としても高まり続けています。
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