円安の影響で金相場が1グラム1万円を突破し、中東情勢の影響でさらに高騰しています。この影響で、砂金採りができる観光施設には一攫千金を狙う客が殺到しています。同時に、深海や温泉からの金の回収方法が研究され、知られざる金のリサイクルも行われています。金の買取現場と、金需要の増加に対応する「都市鉱山」からのリサイクル工場についても追跡取材しました。
■一獲千金は甘くない? にぎわう砂金観光施設
静岡県伊豆市にある土肥金山は、半世紀以上前に閉山しました。現在は、砂金採りを楽しめる観光施設としてにぎわっています。
土肥金山 淺賀涼太さん:「金の相場が1グラム・1万円に上がり客が増え、2割くらい増加」
ウクライナ情勢や円安の影響を受け、1グラム1万円を突破した金相場。田中貴金属工業によると、中東情勢の緊迫化により、さらに高騰し、10月30日には過去最高値を更新しました。
神奈川県から家族と来た50代女性は、早速、砂金を発見したのでしょうか…。残念ながら、石でした。
砂金はおよそ200粒採れれば1グラム、今なら1万円以上の価値があります。制限時間30分間で、なんとか11個の砂金を見つけ出しました。
4年間通い続けている60代男性によると、端の方をさらうのが多く採るコツだといいます。
男性:「(Q.多い時は、1回でどれくらい?)今年は61粒。これだけ頑張ってやっても、60粒しか採れない」
一獲千金は甘くないと思ったら、強者がいました。数年間かけて、集めたそうです。
数年間通う達人:「35グラムかな」
■砂金の買取 注意すべき条件とは?
ところで、砂金は買い取ってもらうことができるのでしょうか。まずは砂金を鑑定機で調べてもらいます。
貴金属買取店「GINZA SGC」友利亮太郎店長:「純金でございます」
実は砂金は買い取ってもらえますが、条件があります。
友利店長:「0.1グラム未満なので、お買い取りはできない」
このお店では、0.1グラム以上ないと買い取りできないので、ご注意を。
■マグマの中での長い年月…金の鉱脈を生む
かつては日本全国にある多くの鉱山で、金の採掘が行われていました。しかし、金が枯渇してほぼ閉山となりました。現在、商業目的の金の採掘が行われているのは、鹿児島県の菱刈鉱山のみです。
こうしたなか、都心からおよそ350キロに位置する青ケ島の沖合で、世界初の金の回収方法が研究開発されています。
水深700メートルの深海で見えてきたのは、「熱水噴出孔」と呼ばれる割れ目で、およそ270度の熱水が噴出しています。この熱水に金が含まれているといいます。
IHI技術開発本部 福島康之主任研究員:「金が安定して溶けるのは、マグマの近くの水に多い」
金は主にマグマに含まれていて、長い年月をかけて冷え固まるなどして、金の鉱脈になると考えられています。
2年前、噴出孔付近に設置したカゴの中には、金の回収装置が入っています。取り出して分析しました。
福島主任研究員:「鉱山の金鉱石に比べて、高い濃度で金が採れていた」
金は鉱石1トン当たり5グラムほどしか取れませんが、今回の同様の実験では、回収した金のおよそ4倍の量が採れる計算になるといいます。
■温泉から金採取 貢献する生物とは?
さらに、この技術を使って、世界初の試みも行われています。なんと、温泉から金を採取するのです。
地中深くから湧き出している温泉にも、金が含まれているといいます。およそ7カ月後に回収装置を引き上げてみると、世界で初めて温泉から金を取り出すことに成功しました。
福島主任研究員:「温泉から(金が)採れるなんて思っていなかった。実証できたことはうれしかった」
実験を成功に導いたのは、謎の黒いシート。実はある生物の力を借りて、金を回収しているといいます。金の回収に役立っている生物とは…。
福島主任研究員:「これが金属回収材の原料“藍藻”(らんそう)。今、培養しています」
藍藻とは、藻の一種です。
福島主任研究員:「温泉に生えていた藻。温度が50℃を超える環境で育った藻なので、ちょっと特殊」
この藍藻を加工して作られたのが、黒いシートでした。実は藍藻は化学反応により、金を吸着させる性質があるのです。
今後は、この技術を応用して、鉱山や貴金属を扱う工場の廃水でも金が回収できないか実験していくといいます。
■知られざる金のリサイクル工程
金相場の高騰で大忙しの買い取り店を取材しました。
実はSGC買取特設店でも、知られざる金のリサイクルが行われていました。
金を売りに来た50代女性:「金が高くなっていると聞いた」
女性が売りに来たのは、指輪やネックレスなど21点、そのうち金製品は12点です。はたして、買い取り額は…。
貴金属買取店「SGC」岡田英一さん:「こちら53万円ですね。それと7600円」
女性:「すみません。高く買い取ってもらって」
金製品のみの買い取り額は、35万円でした。
■金から誕生した1600万円の子ども靴!
さて、買い取られた金の行方を追います。買い取り店が持っている自社工場を取材しました。
SGC精錬工場 前島奨工場長:「集めた金をこちらの装置にセットして、金を液体状にします」
24金はそのまま溶かし、それ以外は不純物を除いてから溶かします。一部は100グラムの金のバーになり、一部は場所を明かせない秘密の工房で新たな金製品へと生まれ変わります。
叩いていくと、ぐい飲みの形状になります。買い取った金は、工芸品としても販売されているのです。高価な金を扱うので、苦労が多いとか。
金工作家 石川広明さん:「(金が)いっぱい置いてあるので、むやみに人を雇ったりできない。切りくずもゴミじゃないので」
一般には解放されていない金の工芸品の販売所。商品数はおよそ500点、総額100億円にのぼります。あの買い取られた金が、立派な工芸品の数々に生まれ変わるのですね。
なかには、およそ1600万円の子ども靴もあります。お孫さんにいかがですか。
足つぼを刺激できるという製品は、踏めそうにありません。最も高い金製品「黄金の茶室」は、セットでおよそ9億円なり。
金製品の製作・販売・買取「SGC」土屋豊会長:「(Q.ちなみに売れたことは?)1つ売れました。永久に残るものをという思いを持って、金製品を買われる人が多い」
■超多忙…金のリサイクル工場の秘密
現在、最も多く金を回収できるのは、都市鉱山です。電子基板など、金が使われている廃棄製品の山です。受け入れる金のリサイクル工場も、金需要の増加で多忙を極めています。
アサヒメタルファイン製品部 田口紀幸部長:「工場はフル稼働で(金商品を)生産しております」
まず別工場で、都市鉱山から金を取り出します。坂東工場には、金の粉末が持ち込まれます。この粉末を溶解炉に入れ、およそ1300℃の熱で溶かします。その後、水で冷却すると、金が粒状になりました。
アサヒメタルファイン製品部 高辻良斗次長:「約60キロありますので、6億円ぐらいあります」
このリサイクル工場では、オートメーション化により、フル稼働を実現しています。
高辻次長:「人の手でやっていた時は、日勤(作業)だけだった。夜間、自動で動かすことができるようになったので、生産量がカバーできるようになった」
オートメーション化で、生産力が1.5倍に向上したといいます。
田口部長:「ITデバイスや電気自動車、最先端技術に利用されている金は、今後ますます使用量の増加が予想される。リサイクルによる金の再資源化というのは、不可欠な存在」
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