東京電力は6日、福島第1原発事故が発生した昨年3月11~15日までのテレビ会議映像を報道関係者に公開した。会議は同原発や本社などを結んで断続的に行われ、14日の3号機水素爆発で吉田昌郎所長(当時)が「大変です」と叫ぶ様子や、15日に菅直人首相(同)が東電本社に乗り込み「命懸けでやれ」と演説した場面(音声なし)などが映っている。【東京電力提供】

 映像は音声付きが約49時間、音声なしが約100時間。このうち1、3号機の水素爆発直後など7場面、計約1時間半を東電が選び、社員らの顔をぼかした上で報道陣に提供した。
 提供映像には昨年3月12日、1号機への海水注入が首相官邸の了解を得ていないとして本社側から中止の電話を受けた吉田所長が、席を離れてひそかに注入続行を指示したとみられる場面や、同14日に東電の高橋明男フェロー(同)が第1原発から全員が避難するかのような発言をした場面もある。
 撤退問題は菅首相が翌朝、東電本社に乗り込むきっかけとなったが、政府と国会の事故調査報告書は東電の主張に沿って、必要な人員を残しての退避と判断した。国会事故調は、清水正孝社長(同)が政府側に曖昧な説明をしたため誤解を招いたと指摘した。
 東電は当初、映像を社内資料とし、映っている社員のプライバシー保護を理由に公開を拒否していた。6月に経営トップが交代し、原子力損害賠償支援機構運営委員長から就任した下河辺和彦会長らが映像を見た結果、条件付きで公開することにした。  条件は公開対象を報道関係者、公開期間を9月7日までに限定した上で録画・録音を禁止し、特定の個人を中傷しないことなど。日本新聞協会は3日に全面公開を申し入れたが、東電は応じなかった。