俳優の西島秀俊が、村上春樹の同名タイトルの短編小説を映画化した『ドライブ・マイ・カー』で主演を務めることが発表された。西島のほか、三浦透子、岡田将生、霧島れいかも出演する。

本作は、商業映画デビュー作『寝ても覚めても』(2018)がカンヌ国際映画祭コンペティション部門に正式出品され、昨年のヴェネチア国際映画祭で銀獅子賞に輝いた黒沢清監督作『スパイの妻〈劇場版〉』では脚本も担当した気鋭・濱口竜介監督の最新長編作。妻を失い喪失感のなかで生きる舞台俳優が、愛車サーブを通して寡黙な専属ドライバーと出会い、一筋の希望にたどり着くまでを描く。村上春樹の原作に惚れ込んだ濱口監督が自ら映画化を熱望、脚本も手掛けた意欲作だ。

西島は愛する妻を失った舞台俳優の家福役に挑み、喪失を抱えながら希望へと一歩を踏み出していく主人公の心の機微を繊細に表現する。ヒロインのみさき役は、歌手としても活躍する三浦。寡黙でありながら芯のある女性ドライバーを演じ、実際にサーブを運転する姿も披露する。岡田は物語を大きく動かすキーパーソンの俳優・高槻役、霧島は家福の妻・音役を務める。

舞台俳優で演出家でもある家福悠介は、脚本家の妻・音と満ち足りた日々を送っていた。しかし、妻はある秘密を残したまま突然この世からいなくなってしまう。2年後、演劇祭で演出を任されることになった家福は、愛車のサーブで広島へと向かう。そこで出会ったのは、寡黙な専属ドライバーのみさき。喪失感を抱えたまま生きる家福は、みさきと過ごすなか、それまで目を背けていたあることに気づかされていく…。

今回の発表に併せて、クランクアップしたキャストと濱口監督のコメントも到着。家福役の西島は「村上春樹さんの短編を濱口竜介監督が映画化する。その話を聞いた時、非常に興奮しました。濱口監督による熱のこもった脚本は想像以上に素晴らしく、いまを生きる多くの人の心に寄り添う作品になっていると確信しています」と作品の出来に自信をにじませた。

みさき役の三浦は「私が演じたみさきという女性は、自分の足で立って、仕事をして生きていく覚悟のある人です。彼女の姿勢から、私はたくさんのことを学びました。自分の弱さを受け入れ、何かを諦めながらも前向きに生きる勇気をもらいました。きっと私のように、彼女の優しさに救われる方がいると信じています」と役柄への思いを熱く語った。

高槻役の岡田は「僕にとってこの現場は忘れられない、忘れたくない現場になりました。この役と出会いこの映画に出会えたことは今後の自分にとって財産になりました。芝居とは何か。とても怖く、とても繊細で、生き物だと感じました」と感慨深い様子でコメント。

音役の霧島は「濱口監督の演出はとても不思議で、リハーサルを含め今まで味わったことのない心地良い緊張感と静けさで、『音』という人物に近づけてくれました。本来演者がしなければいけない作業を、監督が毎回綿密な準備をしてくださり、心からその熱意が伝わり、その思いに絶対に応えたい気持ちになりました」と語っている。

映画『ドライブ・マイ・カー』は、今夏全国公開。

<出演者・監督全文コメント>

◆西島秀俊(家福悠介役)
村上春樹さんの短編を濱口竜介監督が映画化する。その話を聞いた時、非常に興奮しました。濱口監督による熱のこもった脚本は想像以上に素晴らしく、いまを生きる多くの人の心に寄り添う作品になっていると確信しています。
初めてご一緒した濱口監督の演出は新鮮で、撮影を重ねる度に新たな発見がありました。美しいロケーションのもと、スタッフ、国を超えて集まったキャスト一丸となって挑んだ作品です。是非完成を楽しみにお待ち下さい。

◆三浦透子(渡利みさき役)
私が演じたみさきという女性は、自分の足で立って、仕事をして生きていく覚悟のある人です。彼女の姿勢から、私はたくさんのことを学びました。
自分の弱さを受け入れ、何かを諦めながらも前向きに生きる勇気をもらいました。きっと私のように、彼女の優しさに救われる方がいると信じています。皆様のもとに作品が届くその日を、心から楽しみにしています。

◆岡田将生(高槻耕史役)
台本を読ませて頂いた時にすぐ参加したいと思いました。そして、濱口監督といつかお仕事したいと願っていたのでお話を頂いた時にとても興奮したのを覚えてます。
僕にとってこの現場は忘れられない、忘れたくない現場になりました。この役と出会いこの映画に出会えたことは今後の自分にとって財産になりました。芝居とは何か。とても怖く、とても繊細で、生き物だと感じました。完成を楽しみにしております。

◆霧島れいか(家福音役)
濱口監督の演出はとても不思議で、リハーサルを含め今まで味わったことのない心地良い緊張感と静けさで、「音」という人物に近づけてくれました。本来演者がしなければいけない作業を、監督が毎回綿密な準備をしてくださり、心からその熱意が伝わり、その思いに絶対に応えたい気持ちになりました。
撮影現場の雰囲気もとても良く、監督とスタッフの間に一体感が生まれ、その中に赤いサーブが重なったあの感動的な光景は、今でも忘れられません。

◆濱口竜介監督
村上春樹さんの『ドライブ・マイ・カー』という短編小説は、初出の雑誌掲載で拝読した時点から強く、心惹かれるものがありました。こうして映画が完成間近とお伝えできる運びとなり、たとえ大げさであっても、それは自分にとって運命的な出会いであったと言いたくなります。そして主人公・家福役の西島秀俊さんを初めとして、三浦透子さん、霧島れいかさん、そして岡田将生さんと仕事をする機会をいただけたのも、村上作品を映像化する上で、最高の幸運でした。カメラの後ろからキャスト全員の演技に驚き続けた撮影を経て、改めて多くの出会いに恵まれた幸運と、幸福を強く感じています。完成を楽しみにお待ちいただけたら幸いです。