運用から半年・・・『地域の新たなインフラ』目指す オンライン診療『柴三郎号』【熊本】 (24/09/11 19:00)
小国町出身の細菌学者北里柴三郎にちなんだ『柴三郎号』という車がオンライン診療を行っています。
運用開始から半年。今後も検証を続け、『地域の新たなインフラ』となることを目指す取り組みを取材しました。
【医師】
「調子はどうでしたか。この2カ月くらいは暑いよね」
医師が行っているのは『遠隔オンライン診療』です。
小国町の小国公立病院やおぐにサテライト診療所で定期的に受診していた人を対象にことし1月から始まりました。
患者の元に向かうのは『柴三郎号』。小国町出身の細菌学者北里柴三郎のイラストが
デザインされた車です。
看護師と社会福祉士が乗り込み公民館や温泉街など小国郷の16カ所で週3回、診療を行っています。
導入の背景には、医療をめぐる地域課題があります。
小国町と南小国町を合わせて人口約1万人の小国郷では、住民の高齢化が進んでいるほか、医療機関の減少や慢性的なスタッフ不足などが課題となっていて、
『柴三郎号』はこれらの課題解決のために導入されました。
熊本県内では八代市に続いて2例目で、『医療MaaS』と呼ばれる今、全国で注目されている取り組みです。
【小国公立病院 片岡恵一郎 病院事業管理者】
「導入段階としては順調な滑り出しではないか。(利用する)患者の数も他の地域に比べてスピーディーに増えてきている印象。小国郷では求められているものであると感じている」
現在の利用者は、病院に通うのが難しい50代から90代の人で、運用から半年で
45人以上の患者に対し、約50回の診療が行われました。
利用者へのアンケートでは、『また利用したい』と答えた人が100%と好評です。
この日は、黒川温泉近くの駐車場にやって来た『柴三郎号』。
病院によりますと、『オンライン診療』という言葉の無機質さを補うため車の内装には小国杉を使い、癒やしの音楽も流しているということです。
私も実際に体験してみました。
【仲野香穂リポート】
「耳元から音楽が聞こえてくるのと視界に木が入るので、すごくリラックスした気分になります」
こちらの男性は小国公立病院で予約し、この日初めて『柴三郎号』で受診しました。
看護師が『超聴診器』と呼ばれる機器で心電や心音のデータを計測。遠隔で診察する医師がデータを確認します。
【医師】
「OKです。リズムと心音の異常はありません」
【『柴三郎号』で受診した人】
「病院で待合室でずっと1日、半日かかって(受診)するよりも、決められた時間だけに来てもらえると問診で済む人間にとっては大変助かる」
運用開始から半年。
これまで柴三郎号で受診した人には薬を薬局まで取りに行ってもらっていましたが、
今後は薬局と連携し、オンラインでの服薬指導を行い、薬を配達するシステムも進める方針です。
【小国公立病院 片岡 恵一郎 病院事業管理者】
「柴三郎号があることによって小国の人たちが幸せな人生を送れるというものをつくっていきたい」
心地よい医療体験を提供することで『地域の新たなインフラ』となるために『柴三郎号』は今後も小国郷を巡回します。