22日の米国株式市場では、S&P500種株価指数がほぼ変わらずで終えた。米利下げペースを見極めようとする中で、方向性を欠く展開となった。

株式終値前営業日比変化率S&P500種株価指数5851.20-2.78-0.05%ダウ工業株30種平均42924.89-6.71-0.02%ナスダック総合指数18573.1333.120.18%

  市場では大幅な利下げ観測が後退している。米経済がなお底堅いことに加え、米金融当局者が今後の利下げペースについて慎重な姿勢を示していることが背景にある。原油価格の値上がりや新政権下での財政赤字拡大見通しが市場の懸念をさらに高めている。市場が織り込む来年9月までの米利下げ幅予想は前週末以降、10ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)余り縮小した。

  ミラー・タバクのチーフ市場ストラテジスト、マット・メイリー氏は「国債利回りの上昇は株式にとって必ずしもマイナスだとは限らない。 国債利回りがここ1カ月上昇基調にある中でも、株式市場は値上がりしてきた」と指摘。「とはいえ、現在の株価水準がいかに割高であるかを踏まえると、利回りの上昇はそう遠くないうちに株式市場に何らかの問題を引き起こすかもしれない」と述べた。

  米シティグループのストラテジストによると、S&P500種へのエクスポージャーは、過去に10%安を招いた水準に達した。

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  ナスダック100指数は0.1%上昇。ダウ工業株30種もほぼ変わらずで終えた。小型株のラッセル2000指数は0.4%下落。

  引け後に決算を発表したテキサス・インスツルメンツ(TI)は売上高見通しが市場予想を下回り、時間外で3%値下がり。

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  またマクドナルド株価が時間外で一時9%下落。米疾病対策センター(CDC)は、同国西部で発生した腸管出血性大腸菌の集団感染にマクドナルドの「クォーターパウンダー」が関連していると発表した。

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  UBSグローバル・ウェルス・マネジメントの米州担当最高投資責任者(CIO)、ソリタ・マルチェリ氏は「最近のデータは、米経済が従来の想定以上に底堅いことを示しているが、広範なディスインフレ傾向は今も変わっておらず、労働市場の下振れリスクは、可能性は下がったとはいえ依然として残っている」と指摘。「当社では年内さらに50bp、2025年には100bpの追加利下げとの予想を維持している。そうなれば、国債利回りは低下するはずだ」と述べた。

  ニューヨーク・ライフ・インベストメンツのローレン・グッドウィン氏は「9月の好調な経済指標を受けて、市場はすでに利下げペースの鈍化を織り込んでいる」と指摘。多くの人が「中立金利」と考える水準をなお上回るものの「4%に向けて米金融当局が政策金利を引き下げることができれば、株式市場の回復は継続するだろう。この見立てが崩れると、株式市場のボラティリティーが一段と高まる」との見方を示した。

米国債

  米国債相場はまちまち。前日急上昇していた10年債利回りはほぼ変わらずの4.2%前後で推移した。原油価格の値上がりに加え、独連邦債の下落が利回りの押し上げ要因となった。

国債直近値前営業日比(bp)変化率米30年債利回り4.50%-0.4-0.09%米10年債利回り4.21%1.00.24%米2年債利回り4.03%-0.1-0.03%  米東部時間16時45分

  米国債が利下げ開始の局面でこれほど売り込まれたのは、グリーンスパン元米連邦準備制度理事会(FRB)議長の指揮下で異例のソフトランディング(軟着陸)を実現して以来だ。

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  米2年債利回りは、9月の米連邦公開市場委員会(FOMC)会合以降、34bp上昇。利回りは1995年にも同様に上昇したが、当時はグリーンスパン氏率いる金融当局がリセッション(景気後退)を招くことなく、景気を落ち着かせることに成功していた時期だ。1989年までさかのぼる過去の利下げ局面で、2年債利回りは利下げ開始後の1カ月で平均15bp低下した。

  ブック・リポートの著者、ピーター・ブックバー氏は「世界的な長期金利の上昇については、いくつかの理由が考えられるが、1つはインフレ率の持続的な低下がまだ確認できない段階で複数の中央銀行が金融緩和に転じていることに対して、市場が大きなノーを突きつけている可能性が考えられる」と指摘。「私は依然として長期ゾーンには弱気、短期ゾーンには強気の見方を維持している」と述べた。

為替

  ニューヨーク外国為替市場では、円が対ドルで続落。一時は7月31日以来の安値となる151円20銭まで下げた。

為替直近値前営業日比変化率ブルームバーグ・ドル指数1257.900.540.04%ドル/円¥151.10¥0.260.17%ユーロ/ドル$1.0798-$0.0017-0.16%  米東部時間16時45分

  午前中には150円60銭まで買われる場面もあったが、午後は再び売り圧力が強まった。 

  バークレイズの為替ストラテジスト、スカイラー・モンゴメリー・コーニング氏は、足元のドル高は「完全に正当化される」とブルームバーグテレビジョンで発言。「ドルの値上がりに対して一段と積極的になれる」と続けた。

円は対ドルで続落

 

 

  ユーロは対ドルで1ユーロ=1.08ドルの水準を割り込み、8月初旬以来の安値をつけた。欧州中央銀行(ECB)当局者による一連の発言が材料視された。

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原油

  原油先物相場は続伸。中東では停戦合意に向けた米国主導の外交努力が続いているが、各地で戦闘は継続。市場参加者はイスラエルとイランとの緊張関係を注視している。

  ブリンケン米国務長官は22日にイスラエルのネタニヤフ首相と会談。同長官による11回目の中東訪問はバイデン政権にとって、大統領選を前に多面的紛争を停止させる最後のチャンスとなる可能性がある。レバノン保健省によれば、首都ベイルートにある医療施設近くをイスラエルが攻撃し、子供4人を含む18人が死亡、60人が負傷した。

  CIBCプライベート・ウェルス・グループのシニア・エネルギー・トレーダー、レベッカ・バビン氏は「地政学的リスクプレミアムを縮小させる停戦への期待と、さらなるエスカレートへの懸念がせめぎ合っている」と指摘。「この状況は依然として極めて不安定であり、トレーダーのリスク許容度が低くなっていることが大幅な価格変動につながっている」と述べた。

Oil Claws Back Recent Losses | Prices settle higher for a second session on Tuesday

 

 

   ニューヨーク商業取引所(NYMEX)のウェスト・テキサス・インターミディエート(WTI)先物11月限は、前日比1.53ドル(2.2%)高の1バレル=72.09ドルで終了。同限月はこの日が最終取引日だった。中心限月である12月限は2.4%高の71.74ドル。ロンドンICEの北海ブレント12月限は2.4%上げて76.04ドルで引けた。

  ニューヨーク金相場は上昇。スポット価格は一時1%余り上昇し、再び過去最高値を更新した。接戦が予想される米大統領選と緊張が続く中東情勢を受け、逃避需要が強まっている。  

Gold Climbs to Fresh Record as Geopolitics Drive Haven Demand | Metal is up more than 30% this year

 

 

  ING銀行はリポートで「金は今年に入って30%余り上昇し、最も値上がりした商品の一つとなっている。その背景には、利下げ期待や中銀による旺盛な買い、堅調なアジア需要がある」と指摘。「地政学上のリスクの高まりや11月の米大統領選を控えた不透明感による逃避需要も、金相場の高値更新を支えている」と記した。

  マネーマネジャーは金の買い越しを増やしており、金価格に連動する上場投資信託(ETF)にも資金が流入している。シティグループのアナリストは、労働市場のさらなる悪化が金需要を後押しするとし、金の3カ月価格予想を3.7%引き上げて1オンス=2800ドルとした。

  ニューヨーク商品取引所の金先物12月限は20.90ドル(0.8%)高の2759.80ドルで取引を終えた。

原題:S&P 500 Flounders as Wall Street Mulls Fed Path: Markets Wrap(抜粋)

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