2024年10月23日 17時00分
メモ


同意のないAI学習に反対する映画俳優組合-アメリカテレビラジオ芸術家連盟(SAG-AFTRA)や、自社出版の書籍をAI学習に使用することを明示的に禁じるとした世界最大の出版社、ペンギン・ランダム・ハウスが、著名人1万3500人が署名している公開書簡「AIトレーニングに関する声明」の署名者リストに加わりました。

More than 11,000 creatives condemn unauthorized use of content for AI development
https://www.nbcnews.com/tech/actors-artists-authors-open-letter-ai-copyright-rcna176681

Thom Yorke and Julianne Moore join thousands of creatives in AI warning | Artificial intelligence (AI) | The Guardian
https://www.theguardian.com/film/2024/oct/22/thom-yorke-and-julianne-moore-join-thousands-of-creatives-in-ai-warning

AIトレーニングに関する声明は、「生成AIのトレーニングのためのクリエイティブ作品の無許可使用は、それらの作品の背後にある人々の生活に対する重大かつ不当な脅威であり、許可されるべきではありません」との意見を表明するもので、すでにミュージシャンのトム・ヨークや俳優のケビン・ベーコン、アメリカ独立音楽協会やアメリカレコード協会など1万3500を超える個人・団体が署名しています。

この書簡を主催したイギリスの作曲家、エド・ニュートン・レックス氏は、「クリエイティブな仕事で生計を立てている人々は、自分たちの作品が無許可でAI学習に使われている状況をとても心配しています」と述べました。


レックス氏はもともとテクノロジー企業Stability AIで元オーディオ部門責任者を務めていた人物ですが、同社が「AI学習のために著作権で保護されたコンテンツをライセンスなしで使うことは『フェアユース』に当たる」と考えていることに疑問を抱き、2023年に辞任しました。

Stability AIは画像生成AIの「Stable Diffusion」を提供する企業です。Stable DiffusionはAI用データセットの「LAION-5B」を学習に使用していますが、LAION-5Bには画像投稿コミュニティの「DeviantArt」に投稿された画像リンクが含まれていると指摘されており、Stability AIは人間の著作物を無断で学習に使用したとして集団訴訟を提起されています。

画像生成AI「Stable Diffusion」と「Midjourney」に対して集団訴訟が提起される – GIGAZINE


クリエイターは、自分たちの作品が勝手にAIに使われることを「著作権侵害」と主張することが多く、対するAI企業は「フェアユース」だと反論することがあります。一例として、アメリカレコード協会に訴えられた音楽生成AI開発企業・Sunoは、「大手レコード会社は、ニューラルネットワークが単にコピー&ペーストを繰り返すオウムのようなものであると主張していますが、音楽生成AIは音楽のスタイルやパターン、形式など、いわば音楽の文法を学習し、それに基づいて新しい音楽を発明するものです。既存のサウンド録音をデータとして利用し、さまざまな音楽スタイルのパターンを特定するために分析し、人々が新しい作品を作れるようにすることは典型的なフェアユースであり、RIAAや大手レコード会社の主張は法律およびその根底にある価値観と根本的に矛盾しています」と主張しています。

原告の中には、著作権侵害ではなく「不当利得」で企業を訴え、「ネット上のデータをスクレイピングしてAIのトレーニングに用いる行為は不公平、不道徳、非倫理的、抑圧的、不謹慎、あるいは消費者に有害」と主張するものもいます。

YouTuberが生成AIのモデル学習に用いたとしてNVIDIAとOpenAIを提訴、著作権侵害ではなく「不当利得」を主張 – GIGAZINE


レックス氏はクリエイターの保護を求める一方で、イギリス政府が検討している保護策「オプトアウト案」に疑問を呈しています。この案は、クリエイターが明示的にオプトアウト(拒否)しない限り、AI企業がコンテンツを収集できるようにするというものですが、レックス氏はAI企業でオプトアウト制度を運営していた経験を元に「どんなオプトアウト策を施しても、クリエイターはそのチャンスを見逃します。オプトアウトの負担をクリエイターに負わせるのはまったく不公平です。もし政府が本当にこれがクリエイターにとって良いことだと考えるのであれば、オプトイン(許可)制度を作るはずです」と述べています。

レックス氏が居住するアメリカではAIの開発を規制する包括的な法律は存在せず、州単位で規制を行っているのが実情です。レックス氏は「無許可のAIトレーニングをめぐる法廷闘争や法整備が進む中、世界中のクリエイターにとって重要な規制を求める潮流が訪れています」と述べました。

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