25日の日本市場は株式が大幅下落、衆院選後の政局不透明感を嫌気した売り注文が先行した。リスクオフから債券相場は上昇(金利は低下)した。

Prime Minister Shigeru Ishiba Campaigns Ahead of Japan General Election

石破茂首相

Photographer: Buddhika Weerasinghe/Bloomberg

  日本株指数はともに一時1%超下落、東証株価指数(TOPIX)は5日連続の値下がりになった。与党過半数割れの調査が出ている衆院選後の政策が不安定になるとの懸念から、電機や銀行を含めてほぼ9割の企業が下落した。政局不安定化から金融正常化の遅れが意識されて債券が買われ、長期金利は2週間ぶりの低水準を付けた。円は当局のけん制を含めてやや上昇している。

  27日投開票の衆院選で自民、公明の与党が過半数を割り込めば政局は不安定化し、日本銀行の金融政策正常化にも影響しかねない。これが株式と債券を直撃している。月末の日銀金融政策決定会合は利上げの必要性は乏しいと複数の関係者は認識している。米国の雇用統計や大統領領選、連邦公開市場委員会(FOMC)も近づき、結果次第で相場の方向が振れやすくなっている。

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  みずほ証券の上野泰也チーフマーケットエコノミストは衆院選を巡って25日付リポートで「株式は政治情勢の先行き不透明感や不安定な政策運営を嫌う傾向がある」とした。「選挙は買い」という経験則をあてにしていたポジションの解消もあるだろうとして日本株軟調とした。

日本の株式・債券・為替相場-午後3時過ぎTOPIXの終値は前日比0.7%安の2618.32-5日続落日経平均株価は0.6%安の3万7913円92銭TOPIX、日経平均ともに一時1.1%超の値下がり長期国債先物12月物の終値は10銭高の144円06銭新発10年債利回りは1.5ベーシスポイント(bp)低い0.94%と11日以来の低水準円相場は対ドルで0.1%高の151円71銭一時151円46銭まで上昇

  朝日新聞や毎日新聞など複数の国内メディアが報じた衆院選調査では、政治資金問題で批判を受ける自民党が苦戦しており、石破茂首相が勝敗ラインとしていた自民、公明の与党での過半数を維持できるか微妙な情勢となっている。

株式

  東京株式相場は下落。衆院選挙で与党が過半数を割り込むことへの警戒感が重しになり、幅広い銘柄に売りが出た。与党過半数割れとなると政府の財政健全化努力が弱まり、今後の利上げも不透明感が強まる。

  ピクテ・ジャパンの糸島孝俊ストラテジストは、国内外の投資家が選挙が終わるまで株式の購入を控えているため、円安の好影響が相殺されていると述べた。

  岡三証券の内山大輔シニアストラテジストは、与党が過半数割れとなれば石破首相の影響力が弱まる可能性が高く、それが市場の不安をさらに高めていると述べた。

  米カーライル・グループ傘下の理化学機器メーカー、リガク・ホールディングスが東京証券取引所プライム市場に25日上場、初値は1205円と公開価格1260円を約4%下回った。東京地下鉄(東京メトロ)が初日の取引を公開価格比45%高で終えたのとは対照的になった。

  リガクHDの終値は1130円だった。

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  今期(2024年12月期)営業利益計画を従来の4650億円から4555億円に小幅に下方修正したキヤノンの株価は一時5%安になった。

TOPIXの日中推移 | 5日連続の値下がり、一時1.1%超の下落

 

 

債券

  債券相場は上昇。長期金利は2週間ぶりの低水準を付けた。米国の長期金利が時間外取引で一段と低下したことに加えて、超長期債に水準感からの買いが入った。衆院選挙では与党の苦戦が伝えられており、政局の不安定化によるリスク回避や金融正常化の遅れを懸念する見方も相場を支えた。

  三菱UFJモルガン・スタンレー証券の鶴田啓介シニア債券ストラテジストは、超長期債は先週末から金利が大きく上昇していたため「値ごろ感の買いが入っている可能性がある」と指摘。衆院選については「どちらかというと政局の不安定化が警戒され、特に中長期ゾーンは金利低下イベントになる可能性がある」との見方を示した。

  また鶴田氏は衆院選に対する警戒感から「ポジションをニュートラルに近づける調整的な動きが出ていてもおかしくない」と話した。

  朝方発表された10月の東京都区部の消費者物価指数(生鮮食品を除くコアCPI)は2カ月連続で伸びが縮小したが、相場への影響は限られた。東海東京証券の佐野一彦チーフ債券ストラテジストは「とにかく選挙結果を見極めないと日銀の金融政策姿勢も判断できない」と述べた。

新発国債利回り(午後3時時点)

 2年債5年債10年債20年債30年債40年債 0.445%0.575%0.940%1.775%2.190%2.465%前日比横ばい-0.5bp-1.5bp-2.0bp-1.0bp‐4.0bp

債券先物の日中推移

 

 

為替

  東京外国為替市場の円相場は1ドル=151円台後半と前日ニューヨーク時間の終値からやや値上がりしている。米金利低下や衆院選挙を控えたポジション調整からドル売り・円買いが先行。その後は週末の衆院選後の政局を警戒した売りのほか、事業会社の決済が集中する五・十日(ごとおび)で実需のドル買いが重しとなり、下落に転じる場面もあった。

  三村淳財務官は足元の円相場について「一方向あるいは急速な動きが見られると認識している」と指摘。為替動向はファンダメンタルズを反映するのが望ましいとの見解を改めて示し、「投機的な動きも含めて緊張感をさらに高めて注視している」と語った。

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  大和証券の石月幸雄シニア為替ストラテジストは、円相場について米国の金利低下を受けたドル売りや日米の重要イベントを前にした調整から「200日移動平均線をめどに円が買われやすい」と指摘した。

ドル・円相場の日中推移