António Guterres, Secretary-General of the United Nations
司会 杉田弘毅企画委員(共同通信)
通訳 西村好美、渡辺奈緒子
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記者による会見リポート
北朝鮮情勢 答えを急ぐべきでない
このクラブでの会見は8回目、外国要人としては最多になるらしい。ただ過去7回は国連難民高等弁務官時代であり、国連事務総長としては初の会見になった。
国連事務次長が北朝鮮を訪問し、トランプ米大統領がエルサレムをイスラエルの首都に認定した直後の会見となり、メディアの関心は高く、130人が参加した。
国連改革や人間の安全保障、気候変動。事務総長が言及したテーマは多方面に及んだが、会場の関心は北朝鮮情勢にあった。会場からの質問に事務総長はこの問題が喫緊の課題であり、「夢遊病者のようにずるずると紛争に入ってはならない」と強調した。また、「目標は平和的に朝鮮半島を非核化すること」としつこいほど繰り返し、「この目的のため有用だと思ったら、どこにでも出かけて行く」と語った。
この発言を聞いたとき1998年2月のコフィ・アナン事務総長によるバグダッド訪問を思い出した。米英がイラク空爆を計画する中、アナン氏はサダム・フセイン大統領と直談判し一時的ではあれ緊張緩和につなげた。国連の成功体験である。グテレス事務総長の最初の1年は、朝鮮半島情勢への対処の年となった。もしも事務総長が北朝鮮を訪問することになれば、久しぶりに国連が存在感を発揮することとなるだろう。
事務総長は会見の最後、ブラジルのタンクレード・ネーベス氏の言葉を紹介した。ネーベス氏は大統領に選ばれたものの就任前の1985年、惜しまれながら亡くなった政治家である。「彼は政治家に必要なことを聞かれ、こう答えました。『忍耐、忍耐、忍耐、忍耐、忍耐、忍耐、忍耐』」。北朝鮮問題は喫緊の課題ではあるが結論を急ぐべきでない。事務総長のメッセージは鮮明だった。
毎日新聞社外信部長 小倉 孝保