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Michael Sandel, Professor, Harvard University
著者と語る『それをお金で買いますか――市場主義の限界 』

『これからの「正義」の話をしよう』などで知られるマイケル・サンデル・ハーバード大学教授が市場主義の問題などについて話し、記者の質問に答えた。

司会 日本記者クラブ理事 会田弘継(共同通信)
通訳 西村好美、渡辺奈緒子(サイマル・インターナショナル)

ハーバード大学サンデル教授のページ

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早川書房の著書のページ
http://www.hayakawa-online.co.jp/product/books/113537.html

日本記者クラブのホームページ
http://www.jnpc.or.jp/activities/news/report/2012/05/r00024332/

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記者による会見リポート(日本記者クラブ会報2012年6月号に掲載)

危機の民主主義を立て直そう

新著『それをお金で買いますか』の出版に合わせての来日だが、いま日本人がこの人に問いたいことはたくさんある。

前著『これからの「正義」の話をしよう』が日本でベストセラーになったのは2010年。すでに80万部を売ったという。一般向けに書かれたとはいえ、思想・哲学の書としては異例だ。

当時、なぜそんなに売れるのかと考えた。アフガニスタンの戦場での生死を分ける選択。「あなたなら、どうする」。答えようもない問いにあふれていた。日本人が問うことを忘れてしまった問題を正面切って取り上げていたのが、読者を引きつけた理由だろう。書評を依頼されて、そう書いた記憶がある。

その翌年、日本人自身が、もっと過酷な体験に直面し、まさに戦場で生死を分けるような選択に、今も直面している。

会見では、震災と原発事故を経た日本人がいま問い掛け続けている問題の「解」を、サンデル教授に求めようとする質問がいくつも出た。

なかなか進まない被災地のがれき処理。どうしたらいいのか。太平洋を渡っていく大量のがれき処理の経費はだれが負うべきか。

日本の被災地の状況を詳細には知らない教授からは、明快な答えはでない。知っていたとしても、明快には答えられなかったろう。

それは、前著でも新著でも同じだ。教授が「道徳的ジレンマ」と呼ぶ、現代社会のさまざまな難問に明快な答えはない。会見冒頭に教授が言ったように、それぞれが信じる「正義」や「善」といったものを基準に、公共の場に自らの意見をさらし、反対者にも敬意をもって、民主的議論を続けていく。そのようにして、危機の民主主義を立て直せ。それが教授のメッセージだ。

会報委員長 共同通信論説委員長兼編集委員室長 会田 弘継