東京五輪のマスコットキャラクターとして誕生したミライトワ。
数々の問題を乗り越え、全国の子供たちによって選ばれた希望の存在である。

しかし、開会式はおろか五輪開催期間中に彼の姿がメディアに映ることはなかった。

コロナ渦における緊急事態宣言下での開催と、開幕直前の種々の騒動―。
様々な難題が重なった為、彼に皺寄せがきたことも仕方なかったと諦めることは容易い。

だが、かつてこれほどまでに冷遇された五輪マスコットキャラが歴代にいただろうか。
彼を選んだ未来を担う子供たちの思いまで踏みにじられたも同然である。

そんな中、彼は誰も見ていないところでも走り続けていた。
情熱の炎を燃やし、自らの使命を果たし抜いていたのである。

それはある意味、我々一般市民の人生そのものの姿と同じであった。

世の多くの人々の一生は、今回の五輪における彼と同じ云わば“注目されない存在”のまま終わる。
時に理不尽な目に遭い、裏切られ、思いを踏みにじられることや、居場所を奪われることもある。
それでも人生は前に進むしかないのだ。

誰が見ていなくても、いかに自分を信じ輝かせることができるか。
自らに打ち勝ち前進し続けることができるか―。

その結果として得られる充実感と、そこに至る闘いにこそ人生における最大の幸福の価値があるのだ。

ついに閉会式をも参加させてもらえなかったミライトワ。
世間の人々も、あまりの理不尽さに心を痛め、彼を心配した。

だが彼の心は澄み切った青空のようだった。
走り抜いた彼の体は、気づけば煌めく黄金聖衣(ゴールドクロス)に包まれていた。

彼は最高の笑顔で、次に控えるソメイティに襷を繋いだ。
無観客のはずの新国立競技場には歓喜の小宇宙(コスモ)が立ち込め、どこからともなく拍手喝采が巻き起こった。

それでもまだ、ミライトワは止まらない。
未来(ミライ)、永遠(トワ)に走り続ける!

ある人との誓いを果たすため―。