新型コロナウイルスの感染拡大は、コロナ以外の通常の医療態勢をもひっ迫させています。

 救急車が、いわゆる「たらいまわし」される事例が増加。救急医療の現場で一体何が起こっているのでしょうか。

“綱渡り”状態の救急医療 崩壊の可能性も

 北大病院 救急科 早川 峰司 科長:「これがECMO(エクモ)です。(患者)1人に使いました。元気になって退院した」

 北海道大学病院の救急科です。自力で呼吸できない重症患者に用いる人工肺装置「エクモ」などの機器が揃っています。

 この救命救急の第一線に立つ早川峰司医師は今、大きな危機を感じています。

 北大病院 救急科 早川 峰司 科長:「救急医療崩壊の可能性がある」

 北大病院は、救急指定病院の中でも重症患者に対応する最も高度な「3次救急」に指定されています。その患者に異変が起きているのです。

 北大病院 救急科 早川 峰司 科長:「2倍近い患者が来ている。救急医療が綱渡り状態というのは皆さんに知ってもらいたい」

 11月に入り、北大病院に救急搬送されてくる患者が急増。2019年と同じ時期に比べ約1.7倍に増えています。なぜ、このようなことが起きているのでしょうか?

基幹病院でクラスター…コロナ対策に忙殺される大病院

 鈴木 直道 北海道知事:「きわめて強い危機感を持っている。例えば交通事故や急病で適切な医療を札幌圏で提供できない恐れが出てくる」

 日本医師会 中川 俊男 会長:「全国各地で医療提供体制が崩壊の危機に直面しています。2週間前には予想できなかった事態です」

 札幌市内には、高度な医療を行う3次救急病院が5つあります。そのひとつ北海道医療センターでは、11月10日にクラスターが発生。

 看護師と入院患者16人が感染し、現在、救急患者の受け入れを停止しています。

 また、手稲渓仁会病院では、11月21日にクラスターが発生し29人が感染。重篤な患者の受け入れを制限せざるを得ない場合があるといいます。

 さらに、札幌医大病院と札幌市立札幌病院では、救急部門が重症化した新型コロナウイルス感染者の治療にあたり、救急医療が圧迫されています。
 
 通常の救急体制を取っているのは、北大病院だけとなっているのです。

救急現場では”たらしまわし”が増加

 北大病院 救急科 早川 峰司 科長:「”たらいまわし”が明らかに増えている」

 新型コロナウイルスの感染拡大により、危機に瀕している札幌市の救急医療体制。患者の受け入れを断られるケースが多発しています。

 北大病院 救急科 早川 峰司 科長:「”たらいまわし”複数の病院に当たっても、受け入れ先が見つからないことが明らかに増えています」

 札幌市消防局が救急搬送した際に3回以上断られた、いわゆる「たらいまわし」事例の数です。コロナ禍の2020年は2019年より多く推移し、特に11月は2.5倍近くになっています。

 北大病院 救急科 早川 峰司 科長:「20年札幌で救急をやっているけど記憶にない。”たらいまわし”が頻発するのは」

 救急医療崩壊の危機。いま私たちにできることは…。      

 北大病院 救急科 早川 峰司 科長:「コロナに感染しないように行動に注意してほしい。感染対策を普通にすれば良いと思っている」