高島)
ここからは、新たな変異株「オミクロン株」がコロナ禍からの回復を目指す日本経済にどう影響するのか?そして、政府が目指す賃上げは実現するんでしょうか。経済評論家の加谷珪一さんにお話を伺います。

●日経平均一時800円以上&NYダウ一時1000ドル以上 急落

高島)
加谷さん、変異株が見つかったことで、こんなに早くガッと株価に影響が出たということなんでしょうか?

加谷さん)
大きく下落したんでびっくりされた方も多いんじゃないかと思うんですが、元々次の感染拡大の懸念がすごくあったところにこの変異株のニュースが来ちゃったんで大きく下げたんですけれども。一時的だという見方が大半ですが、ただちょっと警戒が必要なのは間違いないと思います。

高島)
「オミクロン株」が一体どういう株なのかということがまだ情報が分からないですから。

加谷さん)
それ次第というところがあると思いますね。

高島)
本当にこの急落を見ても、これまでのコロナでの打撃が大きかったんだなと、その警戒感みたいなものを感じますね。

加谷さん)
そうですね。せっかく回復期待というところだったのに、ちょっと水を差してしまったってことだと思います。

高島)
各国が水際対策を強化していますけれども、この水際対策含め日本経済にはどんな影響を与えるでしょうか?

加谷さん)
まだ国内で感染者が出たわけではありませんので、とりあえず現状維持ということだと思うんですが、ただ日本企業は3月決算の会社が多いんですよね。そうなりますと年明けもし、この変異株の感染が拡大するということになると、4月以降の来期の状況に少し影響を及ぼしてくるかもしれません。

高島)
影響というと具体的には?

加谷さん)
日本企業は4月から新しい年度に入りますから、その時には新しい店舗を作ろうとか工場作ろうといった予定があるところを、もしかするとそれをちょっと先延ばしにするとかそういうことが出てくるかもしれません。

高島)
世界の状況によってかとは思いますが、輸出や輸入その辺りへの影響というのはどうでしょうか?

加谷さん)
こちらは今のところは大きな変更はないんですけれども、年明けの状況次第では少し輸出入に影響が及ぶ可能性もなきにしもあらずということだと思います。

高島)
この新しい株がどんな株なのか、そして年末年始をどう過ごすのかということでいろいろと変わってきそうですね。

加谷さん)
大きく変わってくると思います。
●「賃上げ3%」実現する?

高島)
こうした中、政府は企業に対して「賃上げ」を求めています。

板倉)
昨日行われた会議の中で岸田総理は、「業績がコロナ前の水準を回復した企業について3%を超える賃上げを期待いたします」と発言しました。大企業の財務動向を見てみますと、2000年度と2020年度を比べた場合、大企業の経常利益は91%アップ、また内部留保に関しては175%もアップしている。けれど人件費に関しては0.4%下がっているということで、加谷さん。内部留保はこれだけ増えている、つまり企業はお金を持っている、なのに賃金が上がらないのはなぜなんでしょうか?
加谷さん)
これはあくまで企業側の理屈ということになるんですけれども、この内部留保というのは人件費を差し引いた後の利益を積み上げたものという認識ですので、企業からするとここで人件費を2回払うような感覚になってしまうと言うのが1つ。それから、内部留保は本来、工場とか店舗とかの先行投資に使うための資金なんです。これを人件費に使ってしまうと、場合によっては株価に影響を及ぼす可能性もあるということがあるので、二の足を踏んでいる企業が多いんです。

高島)
実際にこの「賃上げ3%」に応じる企業っていうのはどうなんでしょうか?

加谷さん)
「3%」という数字が出ましたので、1つの目安にはなりますから効果はあるとは思うんですが、ただ、これは企業の業績ごとにバラバラですので、みなさん一律に応じてくれるかどうかちょっと微妙なところじゃないでしょうか。

高島)
大企業と中小企業でまた全然違うわけで、中小企業を見てみるとどうでしょか?

加谷さん)
そうなんですね。日本の場合、大企業の下請けのような形で商売をしている中小企業が多いですから大企業が先に業績は良くならないと、なかなか中小企業も・・・という図式があると思いますね。
●なぜこれまで賃金が横ばいだったのか?

高島)
先進国の実質賃金の伸び率を表したグラフですが、各国はぐっと伸びているんですよね。日本はというと、横ばいという事で、大きな差があるなと感じますけれども、日本はどうして上がらないんでしょうか?

加谷さん)
これは、はっきり差がついてしまっているんですが、一言で言うと「企業が成長できていないので賃金も上がっていないと」ということになります。じゃあなんで賃金が上がってないのか?ということなんですが、1つの理由としては、人材投資に消極的だったというのがあります。日本企業は「人材への投資」がものすごく消極的だったんですよね。ですので、ビジネスはあまり伸びなくて、結果的に賃金も伸び悩んでいるという状況だと思います。

高島)
自分でやろうと思ってる方たちはスキルが伸びてくるけども、やはり企業がそれをバックアップするというのは必要ですよね?

加谷さん)
個人の努力は大事なんですけども企業も社員全体に投資をするという姿勢が必要になるんじゃないかと思いますね。

高島)
政府は賃上げを行った企業への「税金の優遇策の強化」や赤字の中小企業が賃上げできるよう「補助金を増やす」というふうにしましたけれども、こうした支援策は有効だとお考えでしょうか?

加谷さん)
これはあったほうがいい政策ではありますが、「賃上げ税制」は、実は安倍政権の時にもやっていてですね、それほど効果は上がらなかったんですよね。これを強化するってことだとは思うんですが、これでバンと賃金が上がるかというとそうはいかないんじゃないかと思いますね。

高島)
私たちの感覚としては、安倍政権の時からずっと言い続けて言い続けて実現しなかったものを今回、なんでもう1回これをバッと出してきたんでしょうか?

加谷さん)
そうですね。やれることは何でもやっておこうということだと思うんですが、逆に言うと、ちょっと決め手に欠いてしまったという事の裏返しではないかなという風に思いますね。

高島)
本当に「賃上げ」をする気あるのかなというところまでちょっと考えてしまうんですが。

加谷さん)
最後はやっぱり企業が儲からないことにはどうしようもないですから、最終的には企業が成長できる環境作りというのが大事だと思います。

高島)
ここまで加谷さんにお話を伺いました。ありがとうございました。
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