26日夜、海外からの観光客の受け入れを6月10日から再開すると、岸田総理が表明しました。欧米を中心に「サル痘」が拡大する中で着々と進む渡航制限を緩和する動きを、専門家はどう見ているのか取材しました。

 新型コロナの感染拡大が収まらない中、いま、世界では“新たな感染症”への懸念が浮上しています。

 それが「サル痘(とう)」です。

 「サル痘」は、天然痘に似た症状のあるウイルス性の感染症で、最初に感染が確認されたのが「サル」だったことから「サル痘」と名付けられました。

欧米中心に患者相次ぎバイデン大統領も危機感 日本では感染報告なし(26日現在)

 WHOには、ここ数週間のうちに欧米を中心に患者の報告が相次ぎ、感染は12か国92人に広がっています。

 アメリカのバイデン大統領も、「感染が一段と拡大すれば、重大な影響がもたらされかねない」と「サル痘」に危機感を示しています。

 サル痘ウイルスは、アフリカに生息するリスやネズミなどの「げっ歯類」が持つと言われています。

 新型コロナの「オミクロン株」の致死率が0.13%なのに対し、「サル痘」の致死率は最大で11%です。

感染症の専門家「患者に直接触れたりしない限りはまず感染しない」

 どんな症状が出るのか、感染症の専門家に聞きました。

「症状からしても、熱が出てきたりリンパ節が腫れてきたり、あとは発疹が出てくるということがあります」(愛知県立大学 看護学部 清水宜明 教授)

 感染すると、発熱や頭痛が続き、その後、顔や体に発疹が出ます。

 通常は2週間程度で自然に回復しますが、WHOの報告によると、子どもや妊婦、基礎疾患がある人は重症化する場合もあるといいます。

「人から人への感染は、患者さんに直接触れたり飛沫を吸い込んだり水ぶくれから出てきた浸出液を直接皮膚につけたり、そういうことをしない限りはまず感染しないんですよね。普段皆さんがされるような、手洗いとか衛生行動をしている限りでは心配はないと思います」(愛知県立大学 看護学部 清水宜明 教授)

 ヒトからヒトへの感染は、密接な接触によるものに限られていて、日本ではこれまで「サル痘」の感染が報告された例はありません。(26日現在)

「現時点で日本国内で感染例や疑いの例の報告は確認されていません。現在、WHO等とも連携をしながら情報収集に努めており、引き続き国内外の発生動向を監視しつつ、必要な対応を講じていく考えであります」(松野博一 官房長官 26日)

 現在、「サル痘」に、特定の治療法はありませんが、「天然痘」のワクチンが高い予防効果があるとされています。

 今後、渡航制限が緩和され、海外との行き来が活発になると予想されるなか、日本で感染が拡大する可能性や、私たちができる対策について、清水教授は次のように話します。

「全くくないとは言わないが、新型コロナなどのようにどんどん広まってしまうことはないと思います。症状があればそれを申告していただけば、そこで止めることできます。普段とは違うような症状があった場合には、すぐに医療機関に相談したり、帰国する時であれば必ず検疫で申し出て、調べていただくことが絶対に必要だと思います」(愛知県立大学 看護学部 清水宜明 教授)

(5月27日 15:40~放送 メ~テレ『アップ!』より)