競合と比べ金融やECなどの分野で出遅れていると指摘されているNTTドコモ。だがエンターテインメント分野においては、複数のサービスで競合を上回る実績を上げている。国立競技場の民営化に向けた運営にも名乗りを上げるなど、より大きな取り組みを見せるNTTドコモのエンターテインメント戦略を、ここ最近の動向や新社長の発言などから確認してみよう。

実はエンタメ領域に強いNTTドコモ

 携帯電話やポイントなどで培った顧客基盤を軸に、自社系列のサービス利用を拡大させて顧客を囲い込む、いわゆる経済圏ビジネス。主力の携帯電話事業での成長が見込めなくなった携帯電話会社がこの事業に力を注いでいることは、これまでにも何度か触れている。その中で、NTTドコモは出遅れていると指摘されてきた。

 その理由は、経済圏ビジネスの軸となる金融やEC関連事業が弱かったためだ。そこでNTTドコモは、マネックス証券やオリックス・クレジットを子会社化するなどして金融事業を強化。さらにECに関しても、「amazon.co.jp」を運営するアマゾンジャパンと協業し、amazon.co.jpで「dポイント」が利用できる仕組みを整えるなどして、キャッチアップを急速に進めてきた。

 だがNTTドコモの経済圏ビジネスが全ての分野で遅れているわけではない。実は他社と比べ優位性を持つ領域もいくつかある。その代表的なものとして挙げられるのがエンターテインメント領域だ。

 NTTドコモは、電子書籍の読み放題サービス「dマガジン」や、アニメ専門の映像配信サービス「dアニメストア」などで、競合を抑え大手サービスとして長年人気を維持している。それに加えて総合映像配信サービスでも、「dTV」を2023年に「Lemino」へとリニューアルしてサービスの強化を進めている。

 とりわけ映像配信サービスは、競合の携帯電話会社が「Netflix」など外資の大手サービスに押されて撤退したり、規模を縮小したりしてきた経緯がある。それだけに、dTVから数えるとおよそ9年にわたって外資のサービスと対抗し続けられている様子からは、同社のエンターテインメント関連事業の強さを見て取ることができる。

競合他社がサービスを撤退・縮小させる中、NTTドコモは2023年に映像配信サービスを「dTV」から「Lemino」にリニューアルして強化を図り、外資の大手サービスと対抗する姿勢を打ち出してきた

競合他社がサービスを撤退・縮小させる中、NTTドコモは2023年に映像配信サービスを「dTV」から「Lemino」にリニューアルして強化を図り、外資の大手サービスと対抗する姿勢を打ち出してきた

(出所:NTTドコモ)

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ボクシングに続きJリーグも、スポーツ配信に注力

 同社のエンターテインメント事業が注力している分野の1つがスポーツである。中でも力を入れているのが、プロボクサーである井上尚弥選手の試合配信だ。実は2018年、映像配信事業を展開していたNTTぷららが井上選手のスポンサーになった。その後2022年にNTTぷららがNTTドコモと合併したことで、現在NTTドコモが井上選手のスポンサーになっている。

 それ故2022年以降、NTTドコモは井上選手の主要な試合をdTV、そしてLeminoでライブ配信している。2024年9月3日に実施される井上尚弥選手とTJドヘニー選手、そして武居由樹選手と比嘉大吾選手による2つの世界タイトル防衛戦も、Leminoで独占無料ライブ配信することが2024年7月16日に発表された。

NTTドコモは井上尚弥選手のスポンサーとなっており、Leminoでその試合を配信している。2024年9月3日の世界タイトル防衛戦もLeminoで無料配信する予定だ。写真は2024年7月16日、井上尚弥選手・武居由樹選手 次回世界戦に関する記者会見から

NTTドコモは井上尚弥選手のスポンサーとなっており、Leminoでその試合を配信している。2024年9月3日の世界タイトル防衛戦もLeminoで無料配信する予定だ。写真は2024年7月16日、井上尚弥選手・武居由樹選手 次回世界戦に関する記者会見から

(写真:佐野 正弘)

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