日銀、金融政策は現状維持の公算 米経済の不透明感強く

日銀は30、31日の金融政策決定会合で金融政策の現状維持を決める公算が大きい。写真は日銀本店。23年撮影。(2024年 ロイター/Issei Kato/File Photo)

[東京 25日 ロイター] – 日銀は30、31日の金融政策決定会合で金融政策の現状維持を決める公算が大きい。7月利上げ後の金融市場の動揺を経ても、経済・物価は見通しに沿って推移しているとみる一方、米国経済はなお不透明感が大きいとの見方も強く、追加利上げのタイミングを慎重に探るとみられる。足元の円安に動きについては植田和男総裁が24日、「日本の物価にどう影響するか丹念に分析して見極めていく。時間的余裕はあると考えている」と述べた。

<経済・物価は見通し通り>

決定会合では「経済・物価情勢の展望」(展望リポート)が議論されるが、実質国内総生産(GDP)や消費者物価指数(CPI)の2026年度にかけての予測数値は前回7月とあまり大きく変わらない見通し。

個人消費は8月の家計調査が弱い結果となったが、猛暑で盛り上がっていた反動で想定内との見方が日銀では出ている。賃金上昇率が拡大しており、消費を下支えするとの声が多い。

25日発表の10月東京都区部CPIでは、一般サービス価格が前年比1.1%上昇と9月の1.2%を小幅に下回った もっと見る 。価格改定が集中する10月に人件費上昇分のサービス価格への転嫁がどの程度進むか注目されていたが、日銀では、賃金上昇分をサービス価格に転嫁していく流れは着実に進んでいるとの声が聞かれる。

<金融政策の方針>

展望リポートでは金融政策運営について、7月に示した「実質金利が極めて低い水準にある」中で、経済・物価が見通しに沿って推移していけば「政策金利を引き上げ、金融緩和の度合いを調整していくことになる」との文言を維持するとみられる。

焦点は米国経済の不透明感や金融市場の不安定性、植田総裁が多用する「時間的余裕」といった文言をどこまで明文化するかだ。

日銀では、市場の安定・不安定は程度問題で、政策変更時のハードルのように解釈されるのは適切でないとの声も聞かれる。展望リポートでは経済・物価のメインシナリオ、リスク要因を詳しく述べた上で政策運営の説明をするため、政策運営はシンプルな記述がふさわしいとの意見もある。金融政策運営の下りは日銀の利上げ方針をシンプルに掲げ、総裁の会見で現時点での考え方を丁寧に示していく可能性がある。

政策判断に当たっての「時間的な余裕」については次の利上げタイミングを示唆するキーワードとなることへの警戒感もある。かつての米国と違い、日本は急速に利上げをしなければインフレが高進するリスクは低く、不確実性が高まっている局面では柔軟に対応できるようにしておきたいという日銀の考えをどのような表現で示すかが焦点になる。

植田総裁は米国経済について、20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議での討議を振り返り「ごく最近のデータがそこそこ良いということから、多少、米経済の先行きについて楽観論が広がりつつあるという気もした」と述べた。

ただ、「もう少し良いデータが長く続くのか、一時的な振れに過ぎないのかは分析を深めないといけない」とも指摘。日銀では、11月上旬の米大統領選や議会選を経て米国の経済政策や米連邦準備理事会(FRB)の利下げ戦略がどうなっていくのか、見極めていく必要があるとの声が多い。

植田総裁は23日の国際通貨基金(IMF)のイベントで、不確実性が大きい時は政策変更を慎重に段階的に進めたいとしながらも、金利が非常に長期間にわたって低水準にとどまるという期待を抱かせると投機的なポジションが大量に蓄積される可能性があると指摘。円キャリートレードの過剰な積み上がりを抑制するため、金融政策の基本戦略を明確にすることが非常に重要だと述べた。

和田崇彦 編集:石田仁志

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