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Amazon Originalドラマ「龍が如く ~Beyond the Game~」が、いよいよ10月25日よりPrime Videoにて世界独占配信スタートとなる。言わずと知れた、セガの大ヒットゲーム「龍が如く」シリーズを基に、オリジナル脚本で新たに制作された全6話の実写ドラマだ。世界240以上の国や地域で配信される。

竹内涼真演じる桐生一馬(左)と賀来賢人演じる錦山彰(右)
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本作では主人公・桐生一馬を竹内涼真、そのライバルとなる兄弟分・錦山彰(錦)を賀来賢人が熱演。監督を務めるのは、映画「百円の恋」や配信ドラマ「全裸監督」を手がけた武正晴だ。

ゲームファン・映画ファンを問わず、本作を楽しみにしてきた方は多いであろうが、筆者は本編を観て心から思った。このドラマは、そんな我々の期待に全力で応えてきたと……!

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本作には大きく2つ、原作ゲームから継承された魅力がある。まず、Amazon Originalドラマならではの大スケールで、原作ゲームの舞台=“街並み”が再現されていること。もう1つは、原作ゲームの“ストーリー性”が生かされていること。単なる人気ゲーム原作の実写化に終わらず、裏社会を舞台とした“特殊な人間模様”にしっかり引き込まれるドラマになっているのだ。

特に、登場人物の中で強い印象を残す1人が、主人公の兄弟分でありライバルとなる錦山彰であろう。彼が持つ人間臭さや弱さ、家族や仲間との関係で葛藤する様子を目の当たりにし、ひとりの人間としてその姿に共感を覚える視聴者は多いのではないか。

錦山彰を演じた賀来賢人

今回は、そんな錦山役を演じた賀来賢人にインタビュー。出演者として感じる本作の魅力や、撮影時のエピソード、錦山というキャラクターへの想い、そして1人の俳優としてサブスク時代の映像作品に関わるスタンスまで、幅広く話を聞いた。

ドラマとしてスピード感が違う、“世界基準”の全6話

――「龍が如く ~Beyond the Game~」という作品について、この大スケールの作品に出演が決定した際の想いから聞かせてください。

賀来賢人(以下、賀来):何より、世界中に熱いファンがいるゲームが原作ということで、相当な覚悟を持って挑まなければと思いました。原作は、キャラクター主体でフィールドを自由に動き回ってストーリーを進めていくタイプのゲーム(=箱庭系と呼ばれるジャンル)の代表的な存在なんですよね。ゲームで極道カルチャーを描くという面でも画期的だったビッグタイトルで、とにかく生半可な気持ちで携わってはダメだと。

―― 「サンディエゴ・コミコン」(7月25~28日にアメリカで開催)でのパネルディスカッションでも、2年前に錦山役のオファーを受けた際は「原作があまりに有名すぎて断ろうと思った」と語っていました。

賀来:そうなんです。実際にサンディエゴ・コミコンの現場でも、ファンの方がすごく多かったんですよ。やはり「龍が如く」は、日本だけでなく世界中で強いタイトルなんだな……と、より実感しました。

――今回のドラマも、まさに世界に向けたものですね。舞台こそ日本の「神室町」(新宿区歌舞伎町がモデル)ですが、制作・配信は完全に世界規模。プロデューサーや脚本家などスタッフにも、海外の方が名を連ねています。

賀来:元々、原作のゲームもしっかりしたストーリーがあって、“映画的な作品”なんですよね。海外のスタッフさんも、「龍が如く」のそういうところに惚れ込んでいたみたいです。

―― 実際、完成したドラマを見て、世界配信を見込んだ作りになっていると感じる部分はありますか?

児童養護施設「ひまわり」で暮らす桐生一馬、錦山彰(錦)、澤村由美、錦山の妹・ミホ
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賀来:第1話の時点で、みなさんも感じると思うのですが、すごく展開が早い。このスピード感は、日本の一般的な地上波のドラマとは異なるものです。それでいて、視聴者を置いてけぼりにしないんですよね。全6話のドラマですが、まさにこれが世界基準の構成なんだなと、よくできているなあと思いますね。実際、編集は大変だったと聞いています。

原作ゲーム屈指の人気キャラクター、真島吾朗は青木崇高が演じている
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原作ゲームが持つコアの部分を大事にしながら、世界で勝負するオリジナルドラマとしてどう成り立たせていくのか。原作ゲームの要素から、どれを取り入れて、どれを外すか。そんな取捨選択がすごく丁寧にされた結果、実現したクオリティなのだと思います。

監督から「原作ゲームをプレイせず撮影に挑んで欲しい」と要望も

――そんな世界基準の作品に、俳優として関わることになったわけですが、今回、武監督から「あえて原作ゲームはプレイしないまま撮影に挑んでほしい」と言われたそうですね。いわゆる“原作モノ”としては、驚きの指示ではないかと思いますが……。

賀来:本当です。実は、僕も監督の気持ちはわかります。というのも、こういう漫画やゲームの実写化って、どうしても、ただのものまねとかコスプレになっちゃうことも多いんですよ。でも僕は、実写化ってただコスプレをすることではないと思っていて。僕たちが実際にお芝居をすることによって、そこに生きている人間・キャラクターを生み出さないと実写化する意味がない。武監督も、同じような考え方なんだろうと思いました。

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あと、今回のドラマには「再構築」という側面がありました。原作ゲームのエッセンスは残しつつ、ドラマオリジナルで新しい「龍が如く」を構築するイメージです。結果的に「再構築」に成功できたのではないかと思っています。

「龍が如く」って人間ドラマが主軸の作品なので、生身の人間が演じることで、より魅力的になる部分もあると思うんですよ。特に錦山という人間について、僕は脚本を読んでとても共感できたので、「再構築」の名目で彼を作り上げていくのはすごく面白かったです。

―― その錦山について、さらに具体的に聞かせてください。ドラマは1995年と2005年、2つの時間軸を行き来しながらストーリーが進みますが、登場人物の中でも特に錦山は、この10年でものすごく変化するキャラクターでした。

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賀来:錦山はすごく人間的で、同時に動物的で、色々な感情を持っています。作中では、どうしようもない運命に翻弄されてしまう立ち位置で、「1つのボタンの掛け違いでこんなことになっちゃうんだ……こんなかわいそうな人生ある?」と思いますよ。脚本を読んだ時から僕は、彼の一番の理解者でいたいと思った。

だから、監督や竹内くんとも何度もディスカッションを重ねて、錦山という人間が10年間で変化していく様を作り上げていきました。で、実際に演じてみて、結構疲れましたね(笑)。彼、結構ハードな人生を送ってるんで。もちろん実際の自分とは別人格として演じますが、それでも役に入り込む中で、かなり気力を使いました。

――疲労するほどの役作り・演技によって、あの錦山が生まれているんですね。先ほどの「ゲームのキャラクターを生身の人間が演じることで、より魅力的になる」という部分にも直結しますね。

賀来:錦山の意識の中にある「嫉妬」や「憧れ」、「自分が持っていないものへの思い」が膨らんでいく流れ。そういう表現が、このドラマだからこそ深く描けたんじゃないかと思っています。そういう部分を、「桐生と錦山の関係の裏には、実はこういうエピソードがあった」と、ゲームのサイドストーリーとして見ていただけたら面白いんじゃないかな。

――賀来さんから見て、竹内涼真さんが演じた桐生一馬はいかがでしたか?

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賀来:竹内くんの桐生一馬像は、本当にブレなかったですね。最後まで彼の作ったキャラクターに軸があって、ちゃんと作品を引っ張る力もあって、男気を感じました。桐生一馬という人間の不器用さも出てたし。何より、一緒にお芝居をしていてやりやすかったです。

今回は竹内くんとのアクションシーンもあったのですが、分かり合えているからこそ、お互いにちゃんと意見を言いながら取り組むことができました。アクションも信頼関係ありきなんです。一歩間違うと、大きな怪我になりかねないので。そのあたりを「どうしたらいいか?」って話し合って、彼と一緒に作り上げていきました。やっぱり、桐生一馬役が竹内くんで良かったなって思います。

大スケールの「神室町」は大画面で見てほしい

――特に原作ゲームのファンの方が本作を観て驚くと思うのが、「龍が如く」の舞台であり象徴である歓楽街「神室町」が大スケールで再現されていることです。1995年と2005年、ルックの異なる2種類の神室町が描かれます。現場ではどのように撮影していたんでしょうか?

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賀来:あれは、東京の郊外に実際のセットで神室町を作り出しているんですが、まず「1995年の神室町セット」でその時代のシーンをすべて撮影して、それが終わってから同じ場所を「2005年の神室町セット」に作り替えて2005年のシーンを撮影したんです。なので、演じる方はすごくやりやすかったですね。

こういう過去と現在を行き来するストーリーって、一般的な地上波の連ドラとかだと、過去と現在を交互に撮影することが多かったんですよ。撮影しながら脚本が上がってくるなど、スケジュールの都合もあって。それで、時間軸が行ったり来たりで役作りが大変だったりもするんですが、今回は最初からちゃんと台本が全部完成していて、目指すゴールも見えているし、「1995年を撮り終わった後に2005年を撮る」と順番もわかりやすくて、非常に演じやすかったです。

――あの街並みがセットだと知った時は、すごく驚きました。

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劇中に登場する神室町は、関東郊外で巨大セットが組まれた
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賀来:もう「まさに新宿」って感じですよね? 僕はあの時代に子供でしたから、直接は知らないですけど、武監督たちは当時の歌舞伎町を熟知しているので、相当こだわって作ったそうです。なので、できればスマートフォンとかでなく、テレビなど大きい画面でその画を観てほしいかな。

そもそも、ドラマといっても「これ映画何本分?」って感じの規模の作品ですから、スケール的には映画みたいなものなので。「できれば、大きい画面で迫力のある神室町を観てほしいなあ」という思いが、作品に関わった本人としてはあります。

――確かにPrime Videoのような動画配信サービスは、テレビだけでなくPCやスマートフォンなど様々なデバイスで観られるのも特徴ではありつつ、やはり大画面だと臨場感は段違いです。ちなみに、こういう映像配信サービスが台頭してきたことで、俳優として演じ方が変わったりすることはあるのでしょうか?

賀来:演技の仕方という意味では、それはないですね。ただ、「自分の演技が世界中に一気に届く」というのは、俳優としてすごく大きいことなので、「世界に出しても恥ずかしくない表現をしなくては」と、気は引き締まります。演じ方などの外的部分が変わることはないのですが、内的にはより気合いを込めている感じ。

具体的には、決してドメスティックにならないよう意識しています。ちゃんと「全世界の人が観るんだ。世界に届けるんだ」という気持ちで挑まないと、作品として勝てないと思っています。

――配信作では、2024年2月に配信された「忍びの家」では、賀来さん自身が企画から携わっていました。その時の経験が、今回の「龍が如く ~Beyond the Game~」に俳優として関わる時に影響を与えた部分はありますか?

賀来:「忍びの家」では、作品の企画から映像の編集、そして配信まで一連の流れに携わったんですが、そこで実感したのは、それら一個一個のピースがしっかりハマらないと作品は作れないということ。本当に、映像作品は総合芸術なんだいうことを再認識しました。また、「これまで自分は俳優部の人間として、どのぐらいその作品に貢献できていたのだろうか?」と、改めて考えるきっかけにもなりましたね。

「龍が如く ~Beyond the Game~」の撮影中も、自分が演じる段階になって「ここまで来るのに、スタッフさんたちの間でどれだけの打ち合わせがあったんだろう?」と、より想像するようになったし、それを踏まえて現場での意見の伝え方とかも変わったと思います。監督の表現したいことを汲み取って、いかに表現して周囲と共有するか、各部署がどんな思いでそれに携わるか、以前よりもずっと深く考えるようになりました。

「龍が如く ~Beyond the Game~」は、10月25日と11月1日の2回に分けて、各3話ずつが配信される。賀来が「スピード感が違う」と語った全6話をぜひ楽しみにしてほしい。

そしてインタビューでも話題になったが、視聴の際はスマホでなく、ぜひテレビなど大きい画面で満喫するとより楽しめると思う。2024年秋、“世界基準”の神室町に迷い込もう。