新型コロナウイルスの後遺症について、16日、新たな発表がありました。日本呼吸器学会と厚生労働省による初めての後遺症調査の中間報告です。それによりますと、症状の重かった中等症以上の患者で、半分以上の人の肺に何らかの異常が残っていたことがわかりました。なぜ、後遺症が残るのか。10カ月にわたる調査に密着しました。
去年3月に救急搬送され、重症と診断された東京都内在住の60代男性は、退院後、後遺症調査に協力しました。
都内在住の60代男性:「コロナ肺炎ということで入院して、3カ月ぐらい意識が全くない。目が覚めたときに、私は天国にいると」
男性は、人工呼吸器とECMOを2カ月以上にわたり装着し、半年近くの入院生活を余儀なくされました。呼吸が安定し、ようやく去年9月に退院。退院後も経過観察を続けてきましたが、3カ月以上経っても、手足のしびれは取れず、酸素ボンベがなければ、日常生活もままなりません。
都内在住の60代男性:「まだ酸素ボンベを背負っているが、表に出るときは、酸素がないと難しい」
日本呼吸器学会と厚労省の調査は、この男性のように症状の重かった中等症以上で、退院から3カ月以上が経過した人を対象に行われました。その結果、353人のうち半数以上の患者の肺に何らかの異常が残っていることがわかりました。
男性を含む感染者の診察・経過観察を統括してきたのは昭和大学病院・相良博典病院長です。
昭和大学病院・相良博典病院長:「やはり肺が結構、壊れていたので、それはコロナウイルスによって起こってきた結果だと思う。今後、重要なのは、なぜ、そのような状況になってしまうのかを見つけないといけない」
さらに、今回の後遺症調査でわかったことがあります。それは、症状が多岐にわたり、しかも長期間続いているということです。全国の病院の入院患者522人のうち、3割以上に疲労感や倦怠感、さらに、睡眠障害、思考力・集中力の低下などの症状が、診断から半年経っても残っていることがわかりました。
なぜ、呼吸器と関係がなさそうな後遺症の症状も出るのか。注目したのは脳です。脳神経内科の二村明徳医師は、こう話します。
昭和大学病院脳神経内科・二村明徳医師:「新型コロナへの感染で、体の炎症とともに脳の中に炎症が起きる。脳の炎症が後遺症として、脳の機能低下をもたらすのではと考えられている」
二村医師の仮説によりますと、体内に侵入したウイルスは、鼻や喉・肺などで炎症を起こします。その炎症が神経や血液を通じて広がり、脳に到達することで、脳の周囲でも炎症を起こしたり、免疫を過剰に活性化させてしまうことがあるといいます。それが後遺症に関係している可能性があるというのです。
昭和大学病院脳神経内科・二村明徳医師:「認知機能・集中力の低下、体の疲れやすさなどがいわれている。脳が疲れやすくなっている状態といえる。コロナにかかる前にできていたことが、できなくなってしまう。記憶力や注意力が低下していることが、逆に社会に戻ったときに、不安やうつを発症させることは両方あると思う。その両方をしっかり調査していく必要がある」
今回の報告にはない重い“後遺症”に苦しむ人もいました。去年4月に感染した東海地方に住む40代男性は、退院から1カ月ほど経ったころ、体に異常が表れました。激しい倦怠感に襲われ、座って話すことさえできない状態になりました。
東海地方在住の40代男性:「急に体調が悪くなって、つらいときは1週間くらい起きることができなくて。重いというか動かない」
男性は地元の病院で、何度も検査を受けましたが、原因はわかりませんでした。後遺症かどうかも不明なまま、いまも日常生活は取り戻せていません。
東海地方在住の40代男性:「つらい症状が襲うと、これが一生続くと思ってしまう。この状態がずっと続くと思うなら死にたいと思って。それとすごく闘った」
いまだに謎が多い後遺症。治療法の確立が、全容解明のカギを握ると相良病院長はいいます。
昭和大学病院・相良博典病院長:「多くの方たちが、後遺症が出ていることを、我々は真摯に受け止めないといけない。例えば、こういう治療法したときに、こういう後遺症が出てきてしまった。それだったら、こういう治療法をした方がよかったのではということがわかってくる。実際に我々の治療法としては、何がいい治療法なのかを見つけていく。
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