日本を代表する女優の黒木瞳が、桂望実のベストセラー小説「嫌な女」(光文社文庫)の映画化作品で監督デビューを果たすことが明らかになった。8月1日のクランクインを前に「極度の緊張感に包まれている」という黒木は、「演者とは全く違う景色が、私をどう衝き動かすのか楽しみにしているのと同時に、これから訪れる私の未知なる日々が、スタッフ出演者にとっては最高の日々になるようにと、今はそれだけを願っている」と初挑戦に意気込んでいる。

 「嫌な女」は、男をその気にさせてお金を出させる天性の詐欺師・小谷夏子と、真面目一徹の弁護士・石田徹子という対照的な二人の女性の人生を鮮やかに描いた傑作長編。夏子の遠縁にあたり、彼女がトラブルを起こすたびに解決に引っ張り出される徹子だが、夏子のことを嫌いになれず……。
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 黒木は「映画『風と共に去りぬ』を観て、あのスクリーンの中に入りたいと思った10代の頃。そして、20代でその中に入った。映画の世界は、すぐに私を虜にさせた」と自身の映画人生を振り返ると、「それからずっと映画作品に出演させていただいている私が、監督をしようと決めたのは、いうまでもない。『嫌な女』という小説に出会ったからだ」と同作との出会いが転機になったと明かす。
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 そして福島大輔プロデューサーに自ら「映画を撮りたい」と打診。54歳にして映画監督に初挑戦することが決まった。黒木はそんな思い入れの深い作品の展望について「主人公、徹子と夏子を通して見えてくる人生の風景、人と人との絆、そして、誰にでも訪れる老い。それでも、“人生捨てたもんじゃない”と思わせてくれる爽やかな読後感を、私は、映画『嫌な女』で感じたいと思ったのだ」と語っている。
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 黒木から話を聞き、「女優が女優を撮る。これはとんでもなく面白いことになるのではないか」と思ったという福島プロデューサーは、「黒木監督と打ち合わせを重ねるごとに、監督の熱い想いを聞くごとに、その確信は強まって行きました。これは間違いなく、大きな挑戦になることと思います。今から楽しみでなりません」と興奮気味。脚本は2016年前期のNHK連続テレビ小説「とと姉ちゃん」を手掛けることも決まっている西田征史が務め、気になるキャストは後日発表される。(編集部・市川遥)
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映画『嫌な女』は2016年全国公開