死刑にいたる病
監督/白石 和彌(しらいし かずや)
出演/
阿部サダヲ
岡田健史(おかだ けんし)
岩田剛典(いわた たかのり)
宮崎優
中山美穂
2015年7月刊行の『チェインドッグ』
文庫版になる際にタイトルが変更された小説が原作。
1)阿部サダヲの目に注目
感情が出ないのに怖い演技
阿部サダヲといえば、舞妓Haaaan!!!(07)が外せない
このときの強烈な印象とキャラクター性は
なくもんか(09)や謝罪の王様(13)
まで継続される感があり
音量を上げろタコ!なに歌ってんのか全然わかんねぇんだよ!!(18)でもそのテイスト感はあった
阿部サダヲ=コメディ映画・演技 のイメージが有る人は
ぜひ「彼女がその名を知らない鳥たち(17)」を観てほしい
阿部サダヲの演技力の素晴らしさが詰まっている
2)アクリル板に映る2人の
カメラワークに注目
これは主人公の心理描写を見事に描いているシーン
この映画の代表的な部分にもなるのではないだろうか?
3)バイオレンス表現は
少し耐性が必要
白石監督の過去作品を知っている人はおなじみ
孤狼の血 孤狼の血LEVEL2 はもちろん
凶悪(13)
などでも見せてくれたバイオレンスシーン。
白石監督にしては若干マイルドかも知れないが、耐性がない人は多少の覚悟は必要かもしれない
希望する大学に入れなかった筧井(岡田健史)。大学生活も楽しむこともなく、中学時代の同級生の灯里(宮崎勇)に声をかけられても、よそよそしい態度を取ってしまうほど。
そんな筧井だが校長先生にもなった祖母の葬儀で帰省をしていた。そんな彼のもとに1通の手紙が届く。
それは数年前に馴染みにしていたパン屋の主人で、24人もの殺人により死刑囚となった榛村大和(はいむらやまと/阿部サダヲ)からのものだった。
悩んだ筧井だったが刑務所で榛村と面会する。
榛村は筧井に対して、
「立件されている9つの殺人事件のうち、最後の事件だけは冤罪だ」
と訴え、証明する依頼を出すのだった。
最初は気乗りしなかったものの、調べてみるとその事件だけは他の殺人事件とは違う側面が見えていくるのだった。
さらに事件を調べていくうちに、榛村に関係する人たちが浮き彫りになってくるのだった。
そして自分の出生も含めた疑念が浮かび上がってきて……
サイコパスあふれる演技において阿部サダヲの怪演ともいえる姿は観ていて恐ろしくも気持ちいいほど。
淡々と喋るだけなのに、この薄ら気味悪さ…
これは阿部サダヲでなければできないほどの演技
それに引っ張られる岡田健史の演技力も大したもの
毎日が退屈で、刺激を探している彼が、榛村からの依頼で事件を調べていくうちに、根拠のない自信を身に着けていったときの目の演技は素晴らしい。
若いときの承認欲求を絶妙に刺激する会話の流れなどは、リアル感があってますます恐怖感がじわじわとあとに来るかもしれない
親からの子どもへの圧迫感
虐待された子どもがおとなになっても持ち続けるトラウマなども表現したりしているといえる。
ネタバレでも見どころではないが
筧井親子3人でのビールを飲むシーンには注目
それぞれのコップに注がれたビールと空き具合が、それぞれへの思いを表現しているのではないか?
筧井はビールを注いでは飲み、途中で継ぎ足す
母親はビールを飲むものの、息子との会話ばかりで飲むことは少なく、グラスに満たされたまま
父親は注がれたビールをすぐに飲みきってグラスを空にする
筧井はなんだかんだ行っても、親子、家族の絆を取り戻そうとしてるように、空けることなく継ぎ足す
母親は、今のままでも十分とばかりにほぼ飲まない
父親は、もう家族であっても愛情が無いことを言わんとばかりにグラスを空にする
このシーンを境に、筧井はある意味大人に、親離れが明確に進んだのかもしれないと思わせるシーンだった。
こういった心理描写も白石監督の妙ともいえるところかもしれない
唯一、岩田剛典の使い方がもったいないというか、豪華すぎるというか…
あそこはもう少し違う役者でもよかったかなぁ
宮崎勇の 幼すぎず、大人過ぎない役柄も良かった。実際にはまだ21歳の女優さんで、劇中役もほぼ世代的に同じなのも
良かったのかもしれない
いずれにしても映画館で見る映画らしい、緊張感あふれる1本になっているので、ぜひ劇場でごらんだくさい